10月初めに開かれた「アルムナイト」(ハッカズーク・キリンビール共催)。各テーブルでさまざまな会社の「元同僚」が旧交を温めた(写真:ハッカズーク提供)
10月初めに開かれた「アルムナイト」(ハッカズーク・キリンビール共催)。各テーブルでさまざまな会社の「元同僚」が旧交を温めた(写真:ハッカズーク提供)
専用アプリを使ったアルムナイとのコミュニケーション例(AERA 2018年11月19日号より)
専用アプリを使ったアルムナイとのコミュニケーション例(AERA 2018年11月19日号より)
専用アプリを使ったアルムナイとのコミュニケーション例(AERA 2018年11月19日号より)
専用アプリを使ったアルムナイとのコミュニケーション例(AERA 2018年11月19日号より)
専用アプリを使ったアルムナイとのコミュニケーション例(AERA 2018年11月19日号より)
専用アプリを使ったアルムナイとのコミュニケーション例(AERA 2018年11月19日号より)

 企業を支えるのは、いまや現役社員だけじゃない。信頼できる「元社員」が宝になる。つながっていることこそ、武器になる。

【採用の新たなカギ?専用アプリを使ったアルムナイとのコミュニケーション例】

*  *  *

 10月上旬、水曜日の夜7時過ぎ。「Alumnight」(「アルムナイト」)と銘打ったイベント会場に、仕事帰りの男女約30人が次々と集まってきた。

「お久しぶりです! 転職先でご活躍だって聞きましたよ」
「全然変わらないですね」

 彼らは外資系のメーカーや国内のシステム会社、人材企業などの「現役社員」と「元社員」。クラフトビール片手に、近況報告や思い出話に花が咲く。

「アルムナイ」は最近、働く人たちの間で急浮上しているホットワードで、「卒業生、同窓生」を意味する英語の複数形、alumni(アルムナイ)から転じて、転職や独立などで会社を「卒業」した人たちのことを指す。アルムナイトはアルムナイとnight(ナイト)をかけ合わせた造語だ。

 イベントを企画したのは人材ベンチャーのハッカズーク。昨年から、企業がアルムナイとの関係を再構築するのを支援するサービスを行っている。

 従来、企業と社員の関係は雇用契約が終わると同時に切れるのが普通だった。いわば「金の切れ目が縁の切れ目」。リクルートや三井物産など一部の企業には、OB・OGの強固なネットワークがあったが、あくまで元社員同士の個人的なつながりによるものだった。ところがハッカズークの鈴木仁志社長によると、最近は、会社として主体的に、元社員との関係を再構築したい企業が増えているという。

 転職が当たり前の欧米では、自社のウェブサイトにアルムナイ向けのページを設けている企業も少なくない。

「日本の会社は辞めた人を場合によっては『裏切り者』扱いしてきました。でもここにきてようやく、それではあまりにもったいない、もっと積極的に関係性を築くべきだという意識が高まってきています」(鈴木さん)

 背景にあるのは人手不足。転職市場は「バブル」と言われるほど活況を呈しており、特に優秀な人材の争奪戦が激しくなっている。転職に対する心理的ハードルも下がっており、各社ともに「優秀な人ほど辞めてしまう」のが悩みの種だ。

 アルムナイと再び関係が構築できれば、転職先で知識やスキルに磨きをかけた元社員を再雇用できる。転職先とのコラボレーションや、独立した社員にはプロジェクト単位での業務委託もできるのではないか。企業側の期待はさまざまだ。

 ただし、アルムナイを企業が一方的に「活用する」という意識ではうまくいかない、と前出の鈴木さんは指摘する。

次のページ