きっかけは教え子からの「死にたい」 僧侶が作った“居場所” 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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きっかけは教え子からの「死にたい」 僧侶が作った“居場所”

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野村昌二AERA

円成寺(岐阜市)の住職、堀無明さん(79、右)。30年以上、引きこもりの自立支援に取り組む。左の男性はNPOのスタッフ(撮影/遠崎智宏)

円成寺(岐阜市)の住職、堀無明さん(79、右)。30年以上、引きこもりの自立支援に取り組む。左の男性はNPOのスタッフ(撮影/遠崎智宏)

「若年無業者」は依然として多い(AERA 2018年10月15日号より)

「若年無業者」は依然として多い(AERA 2018年10月15日号より)

 いじめ、リストラ、貧困、引きこもり……。広がる悲しみや絶望などからくる不安や悩みといった「苦の現場」に、仏教者が向き合っている。

【図表で見る】「若年無業者」は依然として多い

 いま社会問題となっているのが引きこもりやニートだ。彼ら15~34歳の「若年無業者」は約54万人。その自立支援に仏教の教えを通じて取り組むのは、岐阜市にある浄土真宗本願寺派の円成寺(えんじょうじ)の住職、堀無明(むみょう)(79)だ。

「悩んでいる人間を何とかするのが仏教。引きこもりの若者たちも何とかしたい」

 と話す堀は、大学卒業後は大手自動車メーカーに勤務していた。しかし、会社員生活が嫌になり40代の半ばで退職し、故郷の名古屋に戻り高校生相手の学習塾を開いた。その時、教え子から「死にたい」「家出したい」と告げられた。

 この子たちの居場所をつくりたい──。選んだのが、親戚でもあった前住職がいた円成寺だった。10年後、自らも得度。居場所がなく寺で生活したいという子たちの要望を受け入れ、境内に滞在用の建物を設けて共同生活ができるようにした。2007年には、地域で同じように支援活動を行う団体などと統合し、NPO法人チュラサンガを立ち上げた。これまで、のべ800人近くが巣立っていった。

 現在20歳から43歳までの男性5人が、寺に住み込んだり通いで集ったりしている。NPOは活動の柱を農業に置き、若者たちは地元特産の枝豆やブロッコリーなどを育てる。収穫した野菜は近くの福祉施設などで販売し、若者と社会との貴重な接点の場にもなっている。

 堀によれば、引きこもっている人は自己に対する「こだわり」、仏教用語でいう「執着」が強い印象を受けるという。例えば、大学を出ても就職ができない自分を許せない、学校に行けない自分が悪い、というこだわり。そんな時、堀はこう伝える。

「自己に対する執着心は死ぬまでなくならない。しかし自分は生きているのではなく、あらゆる関係性の中で生かされていると気づけば、こだわらずに済む。こだわりを捨て、自分は自分なんだと思えたらやり直せる」

(文中敬称略)(編集部・野村昌二)

AERA 2018年10月15日号より抜粋


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