※写真はイメージ
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 就活生の間でまことしやかにささやかれている「学歴フィルター」の存在。「大学差別」ともとれる行為が水面下で行われているが、その内情とは?

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 企業側にも事情がある。学生に人気の、あるIT企業には毎年10人程度の枠に千人弱の応募があるが、新卒採用担当はわずか4人。ES選別やセミナー開催、筆記試験の準備、面接アレンジなどの作業に追われ、通常業務が滞る。担当者は明かす。

「書類選考ではスポーツなどで特別な実績がない限り、GMARCH以上しか上げない。筆記試験の点数は大学偏差値に比例するので、下位大学の学生を書類で通しても、落ちることが多く、効率が悪くなるからです」

 人事コンサルタントの松本利明さんは、企業が採用活動で学歴を除外するのは以前よりも難しくなっていると語る。

「企業は課題発見力、問題解決力、論理性、ストレス耐性などさまざまな指標と、過去データから導き出した職務遂行要件を掛け合わせて、マッチングを図っています。その指標の一つとして大学名は相関関係が高いことがわかってきた。大手企業ほど、自社で活躍する有名大学出身社員の母数は多くなるので、指標としては外せない」

 ただ、指標は複合的で、学歴だけが絶対条件にはならない。

 また、学歴も一概に高ければいいというわけではないという。松本さんによれば、ある製菓会社では単純作業が得意で、粘り強い傾向のある学生が高く評価され、逆にイノベーションを起こしたいという思考の学生は高学歴でも敬遠された。その会社では業務の持続性が重要で、革新的な思考が強すぎることは「早く辞める」というリスク要因とされていたのだという。

「単純作業が好きで、粘り強い人材を重視するのなら、そのような自社の社員の出身大学はどこか、と分析します。ESをAIが判別して処理する企業もあります。AIには、その企業が重視する人材を抽出するアルゴリズムがあり、その相関の一つとして学歴が入っているのです」(松本さん)

 新型の「学歴社会」からは逃れられそうもない。(編集部・作田裕史)

AERA 2018年9月24日号より抜粋