「たとえば慰謝料を分割で払っていたり、年金支給が始まるまでは生活費を援助するような約束をしたりしているような場合、それがパートナーとの新生活の障害になることもあります。減らす減らさないで揉めたり、老後の生活に不安を感じるパートナーとの関係にひずみが生じるケースもあります」(同)

 中高年向けの結婚相談所で知り合った3歳年下の女性と結婚を決めた男性(74)は、前夫と死別した新しい妻と事実婚の状態にある。これは娘たちではなく、妻の気持ちを尊重しているのだという。男性は、「妻には施設に入居する100歳近い亡き夫の母親がおり、嫁として義母を見送ってから籍を入れたいと希望しています。彼女には息子もひとりいますが、嫁としての責任を果たしてから報告したいとのことで、まだ内緒です」と言う。

 妻の義母が亡くなったら、籍を入れると約束している。自分の娘たちのことは気にしていないという。

「私たちも娘たちもお互い大人であり、それぞれの人生がある。娘たちには以前から『将来、介護が必要になったら自分の金で施設に入るので、お前たちの世話にはならない。その代わり、財産も残さない』と言ってあります。それもあって、口出しはできないと思っているのでしょう」(男性)

 トラブルを防ぐ方法として、露木さんは「あらかじめさまざまなケースを想定して、対策を考えておくこと」とアドバイスする。「人の気持ちは変わるので、予期せぬトラブルが起こり得る可能性は考えておく必要があります。どの選択肢にもメリットとデメリットがあるので、お金で愛情を示す場合でも最低限、自分の生活は維持できるようにしておくことが重要です」

 茜会の川上代表は、「中高年カップルには決まったゴールはない」と話す。

「事実婚や通い婚という選択肢のほか、こうした生活を何年も続けてから届けを出すカップルもいます。中には元気なうちだけ交際し、介護が必要になったら施設に入ると割り切った約束をしているカップルも。結婚にとらわれない柔軟な交際ができるのは中高年のメリットでもあるので、お互いに心地よい形を探していくことも大切です」

(ライター・森田悦子)

AERA 2018年7月30日号