歴史をひもとくと、モノゴトの価値は、19世紀は領土拡大、20世紀は金融・経済の繁栄だった。
領土といえば大げさだが、ごく普通に暮らす人にとっては、大きな家に住んでいる、広い庭があるといった暮らしに価値が置かれていたということだ。
それが20世紀になると、その価値にカネが取って代わる。人々の幸せの価値は、より収入が高い職業に就くこと、多額のカネを稼ぐこと──そこに置かれるようになった。
こうした傾向は、狩猟時代の男が狩りに出て、女が家を守る時代からの発想の域を超えないものがある。
だが21世紀に入ると、人々が幸せに置く軸は、「アメニティー」へと変わった。
豊かであることに越したことはないが、庭つきの大きな家も、有り余るカネもいらない。
大事なのは家族とのだんらんや、ゆっくりくつろげる時間だ。
このように人生をより楽しむことに価値を置く人が増えた。
そうした「アメニティー重視時代」の女性たちは、女性だからこその人生のイベントすべてを楽しもうと元気いっぱいで、いい意味で欲張りだ。
なかでも就職偏差値の高い難関、大手商社に入ってくる女性には、東京大学や早稲田大学・慶應義塾大学・上智大学クラスのOGがごろごろしている。
東京都内なら進学校の出身者、地方なら「地元の神童」と呼ばれた「超」がつく優等生たちだ。
その彼女たちは、男女雇用機会均等法施行から30年を超えたいま、あえて「総合職」ではなく「一般職」として働く選択をする。
かつて総合職として働いた先輩女性たちのなかには、仕事を優先して、家庭を持つこと、子どもを産み育てることを諦めたり、逆に家庭に入るために仕事を諦めたりしてきた人がいることを話に聞いているからだ。
「快適さ」に価値を置く時代に青春期を過ごした彼女たちは、なにかを得るためには、どれかを捨てる「取捨選択」を強いられる人生など、「まっぴらごめんだ」と口をそろえる。
ホノカさん(28)も、そんな「我慢することが不快」で「ほしいモノはすべて手に入れる」ために頑張る時代の典型的な「商社の女」だ。