高校は地方の進学校、恋愛のゴールは結婚、そのためにはいいオトコとつき合いたい。
それには「スペックのいい男」が集まる最高の環境に身を置く必要がある。進学先は、そんな男たちが集まるであろうと思われた東大を選んだ。
東大卒男子を狙うなら、トンジョ(東京女子大学)、聖心、ポンジョ(日本女子大学)、白百合……といった有名女子大でもいいはずだ。これら女子大は東大男子とのインカレ(他大学合同)サークルも盛んである。
それでも東大を選んだワケをホノカさんは、こう語った。
「東大男子との結婚だけが目的ではなかったので……」
その目的とは、ズバリ、最高の環境で勉強を重ねて、一流と呼ばれる企業に就職。「仕事がデキる女」になることだった。
だが、それならせっかくの高学歴だ。「総合職」を目指せばよかったのではないか。
「いや、総合職だと9時5時の勤務で……というわけにはいかないじゃないですか」
もし、そこに男女雇用機会均等法を勝ち取るために頑張ってきた先達女性がいたら、きっと張り倒されるであろう爽やかな笑顔でホノカさんは語った。
勉強も、仕事も、女子力も、何事も「デキる」女はモテると考えたわけだ。
そうなると徹底した傾向分析と対策、リサーチが大事だ。
就活時、重視したのは、就労時間が「一見、拘束が厳しくみえるが、その実、自由な時間が多い」といわれる企業に絞った。
「9時5時、10時6時、その時間だけは拘束されるけれど、拘束時間中の休憩がきっちり取れて、定時であがれると評判のところしか受けませんでした」
そんな評判があるのは企業規模を問わず、商社か銀行が多かった。しかし銀行の一般職は覚えることが多く、デキて当たり前、ミスは行内での居場所を失うほどの致命傷となるという。それに対して、
「総合職男性のアシスタントとして仕事をきっちりこなせば、誰からも干渉されないと思ったのです……」
この一点でホノカさんは大手商社の一般職として就職した。(文中カタカナ名は仮名)(ライター・秋山謙一郎)
※AERA 2018年7月23 日号より抜粋