【当たり前を疑う】かえつ有明中学・高校/早い時期から帰国生を受け入れたり、ディープラーニングに取り組んだりと先進的な教育を実施(写真:学校提供)
【当たり前を疑う】かえつ有明中学・高校/早い時期から帰国生を受け入れたり、ディープラーニングに取り組んだりと先進的な教育を実施(写真:学校提供)
【英語で物語創作】共立女子中学・高校/首都圏の女子校で生徒数が最多。オンライン英会話などの英語教育や、茶道、華道といった日本文化教育に定評(写真:学校提供)
【英語で物語創作】共立女子中学・高校/首都圏の女子校で生徒数が最多。オンライン英会話などの英語教育や、茶道、華道といった日本文化教育に定評(写真:学校提供)

 与えられたお題に沿ってレゴブロックを組み立てる(聖学院中学)。眼鏡や歯ブラシなどのグッズを二つ組み合わせて新商品を考案する(宝仙学園理数インター)。従来の学力テストとはひと味違う入試を実施する私立中学が増えている。

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 首都圏で今年、学科以外の入試を導入したのは、昨年より16校多い136校。その背景を、首都圏模試センター教務情報部部長の北一成さんは次のように分析する。

「ITによる社会の変化や大学入試改革で、受験生に求められる力が知識量から思考力や表現力、コミュニケーション力に変わってきました。学校ではそれらの能力を測る選抜方法に知恵を絞っています」

 かえつ有明中学(東京都江東区)は4年前から「アクティブラーニング思考力入試」を実施。今年のテーマは「当たり前を疑う」だった。受験生は6人のグループに分けられ、一人ひとりに「ももたろう」の冊子が配られる。ミッションは、「桃太郎以外を主役にしてストーリーを作り、それをグループ全員で演じる」。数分間の準備時間を経て、すべてのグループが演じ終えた頃にはグループの絆も深まって、試験を楽しむ様子すらうかがえたという。子どもたちは続けて、グループごとに「当たり前と思っていること」を付箋に書き出し、その中から一つを選んで「当たり前ではないかもしれない」という問いを立てる課題に取り組んだ。試験内容は7人の教員で練り上げた。メンバーの篠原敬司郎教諭は言う。

「入試作成が正式に始動するのは9月ですが、入試が終わった時から翌年に向けて、個々でリサーチしたり、メンバーが集まって議論を重ねたりします。ペーパーテストだけでは読み取れない、生徒の個性や魅力を引き出したい」

 特色ある入試は、若い保護者層から支持されている。バブル後に社会人となった「ミレニアル世代」と呼ばれる人たちだ。
「新4年からがっちり塾に通わせるのではなく、家族との時間や小学生ならではの体験を重視する。習い事も、6年生になっても最後まで続けさせる。そんな価値観を持った家庭に、無理なく受験できる入試として歓迎されています」(北さん)

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