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「注文をまちがえる料理店」にお客さん続々 “プラチナチケット”で記者が潜入

福光恵AERA
見学を兼ねて参加した別の介護施設の職員は、「認知症の方は記憶が苦手ですが、楽しい感情は残っていることが多い。今日はみなさん、ぐっすり眠れそうですね」(撮影/写真部・加藤夏子)

見学を兼ねて参加した別の介護施設の職員は、「認知症の方は記憶が苦手ですが、楽しい感情は残っていることが多い。今日はみなさん、ぐっすり眠れそうですね」(撮影/写真部・加藤夏子)

煎茶付きのお汁粉、あんみつ、どら焼きと抹茶きんとんの3種のメニューを用意。どら焼きにはてへぺろの焼き印も(撮影/写真部・加藤夏子)

煎茶付きのお汁粉、あんみつ、どら焼きと抹茶きんとんの3種のメニューを用意。どら焼きにはてへぺろの焼き印も(撮影/写真部・加藤夏子)

小国士朗さんはアラフォー世代。5年前、心臓疾患が見つかったのをきっかけに、「番組を作らない」テレビディレクターに転身(撮影/写真部・加藤夏子)

小国士朗さんはアラフォー世代。5年前、心臓疾患が見つかったのをきっかけに、「番組を作らない」テレビディレクターに転身(撮影/写真部・加藤夏子)

 看板ウェートレスやウェーターは、認知症のおばあちゃんやおじいちゃん。「注文をまちがえる料理店」は、笑顔であふれていた。

【写真】「注文をまちがえる料理店」のメニューはこちら

和菓子の「とらや」が運営する「とらや工房」。場所は、明治期から別荘地として栄えた静岡県御殿場市東山。竹林を抜けた先に、喫茶室や販売所を配した、人気の施設となっている。

 5月のとある雨の朝、その「とらや工房」で開かれた1日限定のイベントに、多くの人が詰めかけた。名付けて「注文をまちがえる料理店」。なんで「まちがえる」のかというと、認知症を患うおばあちゃんやおじいちゃんが、ウェートレスやウェーターを務めるから。とらや工房の案内にも、こうあった。

「その名の通り、ときどき注文や配膳をまちがえてしまうかもしれませんが、そんなときも『ま、いっか』という温かい気持ちで受けとめてください」

 工房の入り口で参加料(お菓子とお茶付き1千円)を払って、プラチナチケットをゲット。「注文をまちがえる料理店」を体験させてもらうことにした。席に案内されるのは約1時間半後。この待ち時間を利用して、このイベントについて少しおさらいしておこう。

 プロジェクトを立ち上げたのは、テレビ局ディレクターの本業を持つ小国士朗さんだ。著書『注文をまちがえる料理店のつくりかた』(方丈社)によれば、きっかけは2012年、番組の取材で訪れた、認知症を患う人が共同で生活するグループホームだった。

 撮影の合間に、入居者手作りの食事をふるまわれた小国さんだが、この日のメニューは「ハンバーグ」と聞いていたのに、出てきたのはなぜか「餃子」。「間違えてますよね」と言おうとするが、そんなことはまるでお構いなしに、入居者たちはパクパク餃子を頬張っている。

 間違いも、その場にいる人が受け入れてしまえば、間違いじゃなくなるんだ……と気がついたとき、「注文をまちがえる料理店」というワードが小国さんの頭に浮かぶ。同時に思った。

「(そんな料理店があるなら)絶対見てみたい」

 そうした思いが結実したのは、17年の9月のこと。「注文をまちがえる料理店実行委員会」が結成され、クラウドファンディングで1291万円もの支援も集まった。港区のレストランを会場に、認知症を患う人20人が看板ウェートレス、ウェーターとして働いた。

 キーワードは「間違えちゃったけど、ま、いっか」。「てへぺろ」マークをあしらった看板も掲げた。国内はもちろん、ニューヨーク・タイムズからアルジャジーラまで、宮沢賢治なんて知らない海外のメディアの取材も殺到し、3日間限定の一風変わった料理店は、大盛況のうちに幕を閉じた。

 今回は、以前「注文をまちがえる料理店」のメニューとして「とらや」がお菓子を提供した縁で、ここ「とらや工房」が会場になったそうだ。

 そうして工房に目を戻すと、雨にもかかわらず人はどんどん増えていき、整理券をもらうための行列もできるほどの大賑わい。そろそろ私の整理券の、集合時間も迫ってきた。


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