公園では知らない子どもに「この子のおじいちゃん?」と聞かれたこともある。自分が定年を迎えても娘はまだ成人していない。教育費は大丈夫だろうか。

 お金の心配を力に変えた父親もいる。42歳で娘が生まれた北海道帯広市の男性(46)は、娘の成人より先に自身が還暦を迎える不安から「収入アップへの意欲がわき、昇進も果たした」。あとは健康でいることに努力するのみだ。

 半世紀近く生きてきた男女のもとに赤ちゃんがやってくる。それは、夫婦関係や生活スタイルも一気に変化させる渋谷区に住む会社員の女性(41)は、不妊治療を経て38歳のときに長男を自然妊娠で授かった。夫は49歳だった。

 結婚して約6年間、夫婦はそれぞれ仕事を優先し、互いの世界を生きてきた。それが、子どもの誕生後は夫婦で相談し合うことも多くなり、笑顔も増えた。

「私たちはやっと家族になれた気がします。人生で一番の幸せを子どもからもらいました」

 経営コンサルタントの女性(45)は流産を4度繰り返し、42歳のときに娘を出産した。

 分娩の際、一時危篤状態になり、産後は骨粗鬆症で4回も骨折。肺炎や胸膜炎、産後うつにもなった。でも育児は待ったなしだ。高齢出産ゆえ、両親も高齢で子育てのサポートは得られず、逆に両親の介護病気のサポートに回ることもある。

 3歳になった娘は生まれつき病気があり、総合病院や大学病院、近所のクリニックなど5カ所の病院に通院している。手術や検査で入退院を繰り返し、そのたびに病室に泊まり込む。

 妊娠や出産、子育てなどのライフイベントは、自分でコントロールできないのだと実感する。それでも仕事はあきらめない。出産前のように働けなくなった分は、これまで培ってきたスキルでカバーする。なにより働き続けたい理由がある。

「娘が大人になる頃には、もっと女性が働きやすい時代になっていてほしいから」

 高齢出産で得たかけがえのない宝が、原動力になっている。(編集部・深澤友紀)

AERA 2018年6月25日号より抜粋