ウソの種類(AERA 2018年6月11日号より)
ウソの種類(AERA 2018年6月11日号より)
正常のウソ(AERA 2018年6月11日号より)
正常のウソ(AERA 2018年6月11日号より)
パーソナリティー障害(AERA 2018年6月11日号より)
パーソナリティー障害(AERA 2018年6月11日号より)
「不思議系」のウソ(AERA 2018年6月11日号より)
「不思議系」のウソ(AERA 2018年6月11日号より)
ミュンヒハウゼン症候群(AERA 2018年6月11日号より)
ミュンヒハウゼン症候群(AERA 2018年6月11日号より)

 あなたの周りにもいませんか? 「なぜそんな、すぐバレるウソをつくの?」という人。彼らは何を考えているのか、どう付き合えばいいのか。専門家に聞いた。

【例】こんなウソがパーソナリティー障害

*  *  *

 一度もウソをついたことはない、という人はいないだろう。

「自分を守ろうとか、良く見せようとするためについウソをつくのは自然なこと。しかし度を過ぎれば病気です」

 こう話すのは、『虚言癖、嘘つきは病気か』の著者で精神科医の林公一さんだ。では、どこからが病気なのか。

「ウソについての医学的研究は驚くほど少ない。もともとそれぞれの時代の社会や文化、受け取り方などによって、病気か病気ではないのかの境界が変わる、とても曖昧なものです」

 その上で林さんは、病的な虚言の人に共通する特徴として「たくさんのウソをつく」「普通では考えられないようなウソをつく」の二つを挙げる。

 わかりやすい例が、「全聾(ろう)の天才作曲家」ともてはやされた佐村河内守氏だ。かつて公表していたプロフィルによれば、左耳に続き、35歳で右耳の聴覚も消失。盲目の少女との出会いをきっかけに、数々の名曲を完成させた──とされていた。しかし実際は「聴力は少し回復」(佐村河内氏)しており、自作とされた曲の数々も、第三者によるものだった。林さんは言う。

「学歴や肩書を盛るのはよくあることですが、佐村河内氏のケースのように、ウソが肥大化して偽りの自伝まで発表するのは、異常と言わざるを得ません」

 こうした病的な虚言者は家庭や職場でも少なくない、と林さんは言う。

 40代半ばのある女性は、地方公務員の夫と、公立中学、高校に通う2人の子と暮らしている。プライドが高く、派遣社員として10年以上前から働いている大手メーカーの同僚たちに「有名私立大学を優秀な成績で卒業した」「職場での仕事ぶりを評価されて今の会社にスカウトされた」などと話していた。実際は高卒で特にスキルはない。「夫は部署のトップ」「子どもは成績優秀で有名進学校から授業料免除で入学してくれと言われている」というのもすべてウソだった。

 仕事では自分の失敗を「あの人がこうやれと言ったから」などとごまかし、取引先が自分以外の社員を褒めると「あの人は不倫をしている」「会社のお金をごまかしている」などとありもしないことを吹聴した。それが職場でバレて謹慎させられた時は、「職場でいじめられている」とウソをついたために、夫が会社に怒鳴り込む騒ぎになった。

 一方、20代の女性が2年前に結婚した夫は30代のサラリーマン。だが、夫は初対面から「外科医だ」と言い続けてきた。「親の反対を押し切り絶縁して医学部に進んだ」「苦学し世界の『優秀成績者名簿』に掲載されている」など、まことしやかに話を作り上げるので、女性はつい最近まで信じていた。

 心臓発作で亡くなったと言っていた父親は実は健在。さらに夫は自分自身ががんになったと涙ながらに告白し、肺がんだったはずが睾丸のがん、脳腫瘍へと患部が“移動”。抗がん剤治療を受けると出かけては、帰宅後に「副作用でつらい」とトイレで吐くフリまでした。子どもが生まれても夫のウソは収まらない。女性は子どもの教育に悪影響があり、そもそもウソだらけの夫と生活を続ける自信がなくなり、離婚を考えているという。

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