「地図を見ながらだったのではっきりわかりませんが、男性が進路を少し変え、スピードを速めて自分に向かってきたように感じました」

 転んだ女性に対し、男性は「前を見ていないからそうなるんだ!」と捨てぜりふを吐いて去っていった。

 2017年には神戸で、63歳の男が歩きスマホの女性にわざとぶつかり、ケガを負わせたとして逮捕される事件もあった。報道によると、男は「スマホを見ている奴が悪い」と供述したという。

 匠教授は言う。

「歩きながらスマートフォンを使う行為は“ルール違反”です。ただ、小さなルール違反を許せず、怒りを感じて実力行使に出てしまう人が増えています」

 ストレス過多社会といわれる現代。匠教授によると、ストレスがかかり続けることによって余裕がなくなったり、刺激に過敏になったり、被害妄想的になる人が明らかに多くなっているという。

 何度もぶつかり被害にあっている先述の佐衣子さんはこう話す。

「駅のホームでぶつかられると、線路上に転げ落ちるなど命に係わるかもしれない。絶対にやめてほしいです」

(AERA編集部・川口穣)

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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