NHKの特集で話題となった「アラフォー・クライシス」。“不遇の世代”と呼ばれるアラフォー世代が抱える問題は、まさに現代日本が抱える闇に他ならない……。孤立状態にある無業者が推定160万人いると言われているが、その多くが40代だ。親にも相談できないというケースも多い。朝日新書『きょうだいリスク』から問題を考える。
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「SNEP(スネップ)」という言葉を耳にしたことがあるだろうか?
経済学者の玄田有史・東京大学社会科学研究所教授が提唱した言葉であり、「孤立した(Solitary)」「無業の(Non-Employed)」「人々(Persons)」の略語だ。「20~59歳の、結婚したことがなく、学生でもなく、家族以外との人づきあいがない、孤立状態にある無業者」と定義されている。推定では160万人以上もいるという。
「中高年ニート」よりも年齢層が広く、孤立無業状態にある人たちをあらたに総括した形だ。課題も見えてきた。SNEPがそのまま年を重ねた時、やがて親はいなくなり、貯金も尽きる。場合によっては。生活保護を受ける可能性も出てくる。
1998年から不登校やひきこもり状態の人たちの社会参加を支援してきた藤原宏美さんは、現在「NPO法人不登校情報センター」(東京都江戸川区)で訪問支援部門「トカネット」代表を務める。数年前から、「SNEP」あるいは「SNEP予備軍」と思われる人たちの相談を受けることが多くなったという。月に10人以上の相談を受けたこともあった。1年、2年たっても状況は改善せず、継続して相談に訪れる人もいる。
■本来怠け者というわけではない
相談者にはいくつか傾向がみられた。年齢は圧倒的に40代前半が多く、しかも大学を卒業しており、企業に勤めた経験もある人たちだった。不況の影響や個人的な理由から仕事がうまくいかなくなり、無業になって、ひとり暮らしを続けるのがやっとというその日暮らしの状況に陥っている。