羽生結弦は「70年代少女漫画」の永遠の少年? “異次元のメンタル”指摘する声も 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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羽生結弦は「70年代少女漫画」の永遠の少年? “異次元のメンタル”指摘する声も

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AERA#羽生結弦

エキシビションでの羽生。眼球から指の先まで神経が行き届き、緻密にコントロールされているように見える(写真:JMPA)

エキシビションでの羽生。眼球から指の先まで神経が行き届き、緻密にコントロールされているように見える(写真:JMPA)

多くの人々が待ち受けた2月26日の成田空港。姿を見せた羽生結弦は、笑顔だった(写真:JMPA)

多くの人々が待ち受けた2月26日の成田空港。姿を見せた羽生結弦は、笑顔だった(写真:JMPA)

帰国翌日の27日に行われた、所属するANAでの金メダル報告会(撮影/写真部・松永卓也)

帰国翌日の27日に行われた、所属するANAでの金メダル報告会(撮影/写真部・松永卓也)

エフゲニア・メドベージェワ(OAR)、ミーシャ・ジー(ウズベキスタン)と(写真:JMPA)

エフゲニア・メドベージェワ(OAR)、ミーシャ・ジー(ウズベキスタン)と(写真:JMPA)

 2月26日に金メダルを首からさげて凱旋帰国した羽生結弦。自身の連覇を「漫画の主人公にしてもできすぎ」と話したが、専門家は羽生の中に、70年代少女漫画の魂を見ていた。

【写真】成田空港に群がる人々の前に笑顔で姿を見せた羽生結弦

*  *  *
「ユヅルー、ハニュウ」

 その名前がコールされると、会場からひときわ大きな拍手と歓声が起こった。2月25日、平昌オリンピック最終日。フィギュアスケート・エキシビションのトリを飾った羽生結弦(23)は、氷の感触を確かめるようにゆっくりとリンクに立った。

 サンサーンスの「白鳥」にイタリア語の歌詞を付けた「ノッテ・ステラータ(星降る夜)」に合わせ、指の先まで丁寧に舞う。演技が終わるとほおを紅潮させて少しだけ天を仰ぎ、つぶやいた。

「ありがとう」

 この日一番の歓声が響いた。

野球やサッカーなど1千人以上のプロアスリートのメンタルコーチをしてきた鈴木颯人(はやと)さんは羽生について、

「ここまで万人に応援されるアスリートはまれ」

 と話す。鈴木さんによると、多くの人に応援されるキャラクターかどうかが、アスリートとしての成長を大きく左右する。いくら実力があっても、人間性が備わっていないアスリートには早晩限界が来て、やがて消えていく。応援は時には重圧にもなるが、羽生はそれを自分への追い風に変え、66年ぶりの五輪連覇を成し遂げた。

 金メダル翌日の記者会見では、こう言ってのけた。

「4回転アクセルを目指したい」

 鈴木さんは言う。

「プレッシャーもあったはずなのに、それを一切見せない。結果を出した自分を素直にほめ、純粋にスケートを楽しむために次の目標を口にする。異次元のメンタルの持ち主だと思います」

 明治大学国際日本学部の藤本由香里教授は、こうした羽生の鍛錬の末の「透明」な精神が、多くの女性ファンを魅了する要素になっていると指摘する。藤本さんは、羽生にどこか、少女漫画に登場する「永遠の少年」を感じるという。

 例えば、ファンタジー漫画の金字塔『ポーの一族』。ここで描かれる、決して老いない美しい吸血鬼の少年のように、羽生には人々を異世界へといざなう魅力がある。

「フリーで演じた『SEIMEI』も非現実感のあるプログラムでした。羽生選手からは、この世を超えていこうとする美しさを感じます」(藤本さん)

度重なるけがや病気など、次々に襲いかかる苦難を乗り越えて成長する姿も、少女漫画の主人公に重なると藤本さん。

 ライバルとの試合の様子が躍動感豊かに描かれる少年漫画ではない。内面に問いかけ、自らの限界に挑み続ける1970~80年代の『エースをねらえ!』や『アラベスク』のような、モノローグの多い漫画だ。

 登場人物の向上心が際立つこの時期の漫画と共に子ども時代を過ごしたのが、いまの40代以上の女性たち。この層に羽生ファンが多いのもうなずける。

 スポーツのファン心理に詳しい早稲田大学の松岡宏高教授によれば、アスリートのブランド価値は「競技の実力」「外見」「性格やライフスタイルといった内面」の3要素で決まる。なかでも、内面の影響力が最も大きいという研究成果があるという。

「ファンがその選手の成功を自分のことのように感じて達成感を得られる、肩入れできるアスリートには、ロイヤルティーの高いファンがつきやすい。羽生選手の生き方や考え方、ストーリーが、熱狂的なファンを増やしていく」(松岡さん)

 エキシビションにも、羽生らしいシーンがあった。

 全プログラムが終了してリンクを後にする間際。羽生はくるりと向き直ると、誰もいなくなったリンクの片隅で一人、深々と頭を下げた。そのまま体をかがめ、慈しむようにポンポンと2度、氷に触れた。

 これが、羽生結弦が羽生結弦たるゆえんなのだ。(編集部・市岡ひかり)

AERA 2018年3月12日号


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