学校教育の現場では、「子どもが大人を頼れない」ことで、虐待やいじめの問題が深刻化している。そうした問題に、これまでと違ったアプローチをする人たちがいる。
3keys(スリーキーズ)では、16年4月に10代向けの相談・支援サイト「Mex(ミークス)」を立ち上げた。家庭問題やいじめ、不登校、性被害、自殺など、悩みに応じた専門機関の連絡先を150ほど集めたもので、子どもたちは自分に合った支援サービスに電話やメールで相談することができる。
毎月の訪問者数は1万人ほど。これまでに4千件以上の相談があったという。「死んでしまいたい」「学校に行きたくない」「エイズになったかも」など、内容はさまざまだ。
3keys代表の森山誉恵さん(30)がこのサイトを開設したのは、
「子どもが専門機関に助けを求めるときのハードルをなるべく下げたかったから」
厚生労働省が設ける児童相談所全国共通ダイヤルの子どもの利用率が全体の1%未満だという事実に、驚く人は多いのではないか。かけてくるのは基本的に大人だ。
「高校生の4割は『悩みがあっても相談できる人がいない』という調査報告もあります。間口を広げて支援機関へアクセスしやすくする工夫がまずは必要だと感じました」(森山さん)
3keysは、ツイッター社と協力し、「死にたい」「助けて」などの言葉をつぶやく頻度が高い子どもたちの画面に、相談機関の広告を表示することで支援につなげる取り組みも始めている。
「子どもたちが、SNSでつい本音を漏らしてしまうのは、ある意味、現実世界が『狭い』から。彼らにとって学校や家庭は世界のほとんどすべてです。教師や親、友だちに相談することで自分の悩みや弱みが広がってしまうことをすごく恐れている。だからSNSが心のよりどころになっているという子は多いと思います」(同)
いじめの問題についても、同様の構造があるといえそうだ。