ストップイットジャパン代表の谷山大三郎さん(35)は、匿名でいじめの報告や相談ができるアプリ「STOPit」を運営。アメリカで開発されたもので、全国の学校や自治体に使用を呼びかけている。

 現在は31校、1万6千人の児童・生徒が利用していて、18年4月からは7万~10万人にまで増える見込みだ。

「自分がいじめられたこと、いじめを発見したことを匿名で報告したり、チャットで相談したりできます。相談先は、学校や教育委員会で、自動的に関係者全員に情報が届くので、すぐに問題に対処できるのも特徴です」

なぜ匿名なのか。

 谷山さんは、自身のいじめ体験を交えながらこう語った。

「小5から中3ぐらいまで、いじめを受けていましたが、『助けて』と言えなかった。両親に迷惑をかけたくない気持ちもあったし、周りからかわいそうと思われるのも嫌でした。だからつらくても耐えてしまった」

 でも、いまの子どもたちにはそんな思いをさせたくない、と谷山さんは言う。

「匿名なら、自分のように悩みを抱え込んでしまう子でも利用しやすいと思うんです」

 匿名とはいえ、学校名と学年はわかるようになっているので、組織的に対処することも可能だ。「STOPit」を導入することでいじめ問題に対する意識が向上し、いじめ予防や抑止の意味でも効果があったというケースもある。実際、アプリを導入した千葉県柏市の中学校では、前年度に比べ、ネットいじめの発生件数が25%ほど減った。

「私の願いは『STOPit』が必要なくなること。ツールに頼らず、子どもたち自身が自覚をもって、いじめをやめたり、止めたりできる社会にしていくことが、私の究極の目標ですね」

(ライター・澤田憲)

AERA 2018年2月5日号