「移転に合わせて引っ越した人が多いです。僕らも野球部でなかったら引っ越していたと思います。家賃は倍以上になりますが、都心に近いほうが絶対いいです。ここは駅前に行かないと何もないじゃないですか」

 買い物や娯楽、アルバイトも都心が好条件という。大学も学生のニーズをよく理解している。

 学部移転について杏林大学は「文系、医系一体となった総合大学としての教育環境を整える必要があった」ことに加え、「通学の不便性などが学生募集に不利に働いて、志願者確保の上からも課題があった」と説明。大学発祥の地であり、医学部や付属病院のある三鷹キャンパス近くに用地確保できたことから移転集約に踏み切ったという。

 首都圏の大学学部の「都心回帰」が相次ぎ、学園都市・八王子市にも異変が生じている。

 杏林大学以外にも、共立女子大学が八王子キャンパスを利用していた全学部の1、2年生と国際学部の3、4年生を、2006~07年度にかけて神田一ツ橋キャンパス(東京都千代田区)に集約。拓殖大学も15年から商学部、政経学部の1、2年生を文京キャンパス(文京区)に移した。中央大学も22年までに、法学部を多摩キャンパス(八王子市)から都心部のキャンパスに移す予定だ。

 いずれも郊外に展開する以前から確保していた都心部のキャンパスへの「回帰」だ。

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