「賃貸物件の需要と供給のバランスが崩れてきているのは確かです。ワンルームや1Kの物件も学生さん向けという意識を持たず、社会人を含めた単身者向けという括りでお客さんを探しています」

 より厳しい状況にあるのは駅から離れた郊外の物件だ。敷金・礼金をゼロにしたり、家賃を3カ月間無料にしたりする業者も珍しくないという。

 あきる野市との境に位置する杏林大学の移転は、周辺住民の生活にも影響を及ぼす。

 創業24年のそば店の店主(69)は「バス路線の減便の影響が一番大きい」と打ち明けた。

 地元の路線バスは16年春のダイヤ改正で、JR八王子駅-杏林大学間を直行する「急行便」を含め杏林大学に発着する全ての系統を廃止した。

 店主の妻(63)はこんな「異変」もこぼす。

「イノシシ、アライグマ、ハクビシンがふもとに出てくるようになりました。大学がにぎやかだった以前は、この辺までは出てこなかったように思うんです。大学のせいにしてはいけないかもしれませんが……」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2017年11月27日号より抜粋

著者プロフィールを見る
渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

渡辺豪の記事一覧はこちら