10年かけて文京区内のキャンパスを整備し、受け皿拡充を図った拓殖大学。八王子市から移転した15年度の商学部の志願者数は5287人(前年度比2076人増)、政経学部は4953人(同1355人増)と成果は顕著だ。一方で、外国語、国際、工の3学部を残す八王子市内のキャンパスの名称を「八王子」から「八王子国際」に改称。広い敷地面積を生かし、寮やスポーツ環境の整備を図り、「留学生も多くグローバルな学びの環境が整いました」(広報室)としている。

 ただ八王子市内の他の大学も「都心回帰一辺倒」ではない。

 工学院大学は16年度の入学生から、情報学部の1、2年生を従来の新宿キャンパスから八王子キャンパスに移し、新校舎を整備。動物看護教育のヤマザキ学園大学も16年度以降、全学年が渋谷区から八王子市にシフトした。八王子市はこれらを踏まえ、都心回帰を「課題とは捉えていない」(学園都市文化課)とし、学園都市ブランドの一層の強化に努めている。

 とはいえ、「都心回帰」のトレンドは着実に押し寄せている。それを強く印象付けたのは、中央大学の「看板」ともいえる法学部の移転表明だ。

 進学塾「早稲田アカデミー」の伊藤誠教務本部長は、法曹志望者の減少や弁護士の就職難なども相まって全国的に法学部のブランド力は低下傾向にあると指摘し、こう唱える。

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