「だからこそ、中央大学の中で一番ブランド力の高い法学部を都心に戻し、国立大学や他の私立大学と併願する優秀な学生を多数確保しようとするのは必然です」

 都心回帰には逆風も吹く。

 東京一極集中の緩和のため文部科学省は9月、東京23区内の私立大と私立短大について、18年度の定員増と19年度の大学新設を原則認めない新基準を告示した。伊藤氏は、この23区の定員抑制策や入学定員管理の厳格化だけによって“地方活性化”につなげるのは困難とみる。

 というのも、例えば17年度に早稲田大学に合格した学生のうち、7都県の関東出身者は76%。6割を少し超える程度だった20年前の水準と比較すると、変化は一目瞭然だ。

 元文科官僚の寺脇研氏も「学科学部の区別もなく、23区という要素だけで線引きするのは議論が粗雑」と苦言を呈する。

 6月の閣議決定で23区内の定員増を抑える方針が確認された経緯を踏まえ、寺脇氏は言う。

「高等教育無償化を導入すれば大学進学率の上昇が見込まれる一方、18歳人口減少の流れもある。官僚主導であれば当然詰める政策の合理性が、政治主導によって軽視されている印象を受けます」

(編集部・渡辺豪)

AERA2017年11月27日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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