五輪翌年の世界選手権は若手や無名選手がいきなり飛び出す傾向がある。リオ五輪個人総合で優勝したシモーン・バイルスらが休養を理由に欠場。新しい採点規則の影響を探る意味合いもある。

 優勝の背景には幸運もあるが、2020年東京五輪に向けて、強い選手という印象を世界と審判に与えたことは大きい。

 国内へのインパクトも期待できる。常に世界のトップ争いをしてきた男子に対して、女子は「男子とは違う」という言い訳とあきらめを口にしてきた。しかし、村上が優勝したことで世界と戦えることが証明された。

 世界選手権に出場した、ともに18歳の宮川紗江、杉原愛子も刺激したはずだ。

 村上が体操を始めたのは小学校入学前。五輪メダリストの池谷幸雄さんのクラブ1期生だった。物おじしないようにと、幼い時期にドラマやCMに出たこともあった。自分をどう見せるのか、という意識もほかの選手に比べると進んでいる。

 日体大進学時には、環境の変化に苦しんだが、基礎練習や減量に取り組んで、いまがある。強い脚力を生かした跳馬とゆかの選手というイメージを覆し、こつこつとオールラウンダーの地位を築いた。

 近年、世界の女子体操は10代選手を中心にタイトル争いが展開されている。その点でも、21歳の村上の台頭は興味深いものだ。

 東京五輪を迎えるときは23歳。体操ではベテランと呼ばれる域に入った彼女がどんな演技で世界と戦い、結果を出すのか。楽しみは尽きない。(朝日新聞スポーツ部・潮智史)

AERA 2017年10月23日号