部活や塾で忙しくなる時期。菅原教授は「『土曜日は必ず家族で夕飯を食べる』など、我が家のルールを決めて話をするのも有効」と話す(撮影/鈴木愛子)
部活や塾で忙しくなる時期。菅原教授は「『土曜日は必ず家族で夕飯を食べる』など、我が家のルールを決めて話をするのも有効」と話す(撮影/鈴木愛子)

 仕事と子育ての両立は、どうしてこんなにつらいのか。そう感じながら、毎日必死で走り続けている人は少なくない。待機児童のニュースを聞くたびに、上司や同僚に気を使い、後ろ髪をひかれながら会社を後にするたびに、いつになったら楽になるの?と思ってしまう。小学生になっても、ティーンエイジャーになっても新たな「壁」があらわれると聞けば、なおさらだ。AERA 2017年9月18日号は「仕事と子育て」を大特集。親の言うことを素直に聞いてくれなくなる思春期の子ども。でも、実はけっこう、「働く親」の背中を見ている。

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 手のかかる幼少期を乗り越え、中学校入学でほっと一息。なかには、このタイミングで「自分自身のキャリアを見直そう」という親たちも少なくない。しかし、思春期には、友人とのSNSトラブルや反抗期、学習や進路の問題など、一筋縄ではいかない新たな壁が待ち受けている。心身ともに成長し、社会に出る前の準備期間ともいえる重要な時期、子どもと過ごす時間の限られる働く親は、どう向き合っていけばいいのか。

●理解を得られず転職

 医療機器メーカーに勤める中川洋子さん(仮名=52)の長男は、小学校低学年で先生との折り合いが悪く、不登校気味に。学習の難易度が上がる中学や高校に上がってもその傾向は続き、進級可能な出席日数ギリギリで登校する日々が続いた。

「私が働いているから、愛情が足りていないのかな……」

 と、自分を責める思いに駆られたことは一度や二度ではない。でも、相手は反抗期真っ盛りの息子。常に一緒にいるだけが解決策ではないと割り切った。退職してキャリアが途切れてしまうことへの不安もあった。

 中川さんは2人の子どもの成長に合わせて、柔軟に仕事や働き方を変えてきた。幼少期や長男の不登校が出始めたころ、長女の小学校受験など、子育てに手を掛けたいタイミングには、自宅勤務を織り交ぜて対応した。

 今でこそテレワークも珍しくないが、当時は約20年前。状況は全く違う。中川さんはこれまで5度の転職を経験。仕事内容に惹かれたのが主な転職理由ではあるが、うち2度の転職は、長時間残業ができないことなどを責められ、上司との関係が悪化したことも要因となった。

 それでもキャリアを積み重ねてこられたのは、中川さん自身が職場になくてはならない存在となったから。長女を出産する際も、職場で3人同時に妊娠が発覚したこともあり、いち早く産前産後含めて1カ月で仕事に復帰し、会社に貢献した。

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