エン・ジャパン「エン転職」の岡田康豊編集長によると、5千人以上対象のアンケート調査(複数回答可)で、「退職を考え始めたきっかけ」について聞いたところ、「給与」(46%)、「評価や人事制度」(37%)、「残業や休日出勤が多い」(28%)と待遇や働き方に関する不満が多い。「結婚子育て介護などの家庭の事情」を挙げたのは10%と、育児だけが要因の転職は多くはない。ただ、中川さんのように、育児をきっかけに長時間労働や職場の理解不足など、両立をはばむ要因が顕在化し、転職に至るケースは珍しくない。

 さらに、中学受験で子どもが塾に通いだしたり学童保育が終了したりする「小4の壁」といった、思春期特有の問題を機に、働き方を考える動きもあると岡田編集長は指摘する。

●突然の“SNSいじめ”

 会社員の小山奈津子さん(仮名=44)もこの問題に直面した。小山さんが長女の異変を感じたのは、中学に上がってまだ間もないころ。仲良し4人グループだったはずが、突然いやがらせを受けるようになった。

 ある日、4人のLINEグループから、長女だけ突然「強制退出」させられ、学校でも仲間外れや、陰口を言われるように。別のSNSには、他の3人がテーマパークで遊んでいる満面の笑みの写真が、これみよがしにアップされていた。

 上司に話し、担任の先生に相談するため、仕事を抜けさせてもらった。ただ、それで仲間外れは解決しない。自己主張が強い長女の性格を考えると、100%相手が悪いわけではないのも分かっていた。ただ、何もしないわけにはいかなかった。

 ある日、先生との面談後、教室を出ると、刺すような視線で睨まれるのを感じた。視線の先に目をやると、長女を仲間外れにしている、件の3人組の姿。「先生にチクリに来た」と警戒したのだろうか。「母親が介入することでエスカレートするのでは……」。そう思うと、胃がきりきりと痛んだという。

「小学生のころは、親同士で話したり、担任の先生に相談すれば、ある程度問題が解決できました。でも、中学生になるとそうはいかない。親って無力なんだと痛感しました」

 その後1年程度、仕事を抜けて、先生と週1回面談。当時、小山さんは経営戦略の重要なポストを担い、職場を抜けるのは容易なことではなかった。

 ただ、幸いだったのは、上司の理解があったことだ。仕事には厳しかったが「結果がすべて」という考え。その分、自宅での仕事など残業は増えたが、仕事で成果をきっちり出していたこともあり、働き方は自由にさせてもらえた。

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