長女の言葉も後押しになる。

「私のせいで仕事を休まないで。そのほうがプレッシャーだよ。働くママが好きなんだから」

●親の仕事を「評価」

 お茶の水女子大学の菅原ますみ教授(発達心理)は、思春期は心身ともに大きく成長する一方、精神的に不安定になりがちで、幼少期とは異なる目配りが必要だと指摘する。

「適度な距離感で、対人関係や行動、学習の進捗などを見守って。頭ごなしの『親モード』ではなく、一人の人間として尊重する、職場の『新社会人教育』のような心構えが大切です」

 さらに、自分や親に対して客観的な視点を持ち、働く親を「社会人の先輩」として評価するようになるのもこの時期だ。小山さんの長女のように働く親に一目置いてくれるようになる。

「親が心配するほど、思春期の子どもの親への評価は、低くないんです」

 と、菅原教授。キャリアや将来を考え始めるこの時期だからこそ、親の仕事ぶりを見せてあげることが大切だという。共働き夫婦なら、父と母、二つの働き方を提示することができる。

 一方で、思春期になると母親以上に距離を置かれてしまいがちなのが父親だ。ある父親は思春期の娘との距離をアクロバティックな方法で縮めたという。ウェブメディア「経営ハッカー」編集長の中山順司さん(46)だ。

 小学生時代はわんぱくだった長女。中山さんと野原に行ったり、虫捕りをしたり。遊びながらコミュニケーションが取れた。だが中学生になった途端、娘との間に高くて厚い壁を感じるように……。お風呂も一緒に入らなくなるなど、会話量も激減した。中山さん自身、男兄弟で育ったので、成長した娘とどう接していいのか分からず、戸惑った。

「このままだとまずいぞ、と。『ダサイ』『キモい』と、まったく話をしてもらえなくなる前に、偏見を持たずに接してもらいたいと思いました」

 そこで、連載していたウェブメディアで、父と娘の対談連載を企画。当時中1だった長女の機嫌がいいタイミングを見計らい、それとなく外に誘い出し、好物のアイスを買い与えたところでボソッと提案した。

「とりあえず、実験でやってみない?」と伝えると、しぶしぶ了承してくれた。

●あえて常識から外す

 週末の1時間半、近所のファミレスで、父娘が膝をつきあわせて、じっくり語った。長女が他の家族の視線を感じて照れてしまわないよう、対談場所はあえて自宅以外を選んだ。

次のページ