●日本型経営の問題も

 80年代後半以降は『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のような、「経済大国・日本」の姿が、海外からも注目される。一方で日本型経営、会社の問題については、先駆的な『法人資本主義の構造』がある。現在の社会をも下支えする「出世・努力、学歴社会」という根深い問題は、竹内洋の仕事に詳しい。経済分野を中心に国際化を意識した「日本人論」が増えると同時に、80年代後半から「日本人論」は、細分化と深化が進む。

「自然・風土」では、自然の災害に対する日本人の意識と行動を分析した『災害と日本人』。「歴史」では、網野善彦が日本人の均質性を海民、山民といった多様なあり方から捉え直す。なかでも最も深化したのが「性意識」の視点。上野千鶴子は、これまでの家族とこれからを『近代家族の成立と終焉』で読みかえる。マス文化の分析としては鶴見俊輔による映画、歌、漫画、文学から語る『日本人のこころ』を挙げたい。

 この夏休み、ぜひ日本人論の古典を読んでみては。(ライター・本山謙二)

AERA 2017年8月14-21日号