実はF35AはF2のような対地攻撃能力も持つ。安倍首相は政権復帰間もない13年2月、国会で「敵基地攻撃をアメリカに頼り続けていいのか。F35の能力も生かせるかどうか検討しなければ」と語っている。

 今年3月に首相に敵基地攻撃能力を持つよう提言した自民党内には「F35Aにミサイルを積み北朝鮮のミサイル基地をたたくべきだ」との声もある。政府はこの「マルチロール機」(若宮氏)の生産に国内企業が関わり、技術の向上をと望む。

 ただ、ことはそう簡単にはいかない。ロッキード・マーチン社の下請けとなる三菱重工は、当初担うとみられた胴体製造について「調整中」と口が重い。設備投資が国内向け38機分だけでは割に合わないからだ。

●日本独自のステルスへ

 F35Aには、共同開発9カ国と日韓イスラエルなど購入国が部品を修理用に融通する仕組みがある。安倍内閣は国内製造部品を回せるよう武器輸出方針を緩めたが、空回り気味だ。

 他の空自戦闘機の後継機にF35Aを採用して「国内生産」向けの部品製造を増やす手もあるが、日本は共同開発国でないため部品製造に関われる範囲が狭く、波及効果は日米共同開発のF2に遠く及ばない。

 防衛省では「日本の戦闘機製造能力が失われる」(幹部)との危機感から、視線はすでにF35Aの「次」に向かう。国産か、武器輸出緩和を生かした国際共同開発か。三菱重工やIHIなど200社以上が関わる先進技術実証機X2を使って日本独自のステルス性能を高め、新たな戦闘機づくりに生かそうと狙う。

(朝日新聞専門記者・藤田直央)

AERA 2017年6月19日号