住宅ローンを返済する世帯のうち60代と70代が3割を占める。高齢化も深刻だ(総務省統計局「平成21年全国消費実態調査」) (撮影/写真部・大野洋介、立体イラスト/kucci)
住宅ローンを返済する世帯のうち60代と70代が3割を占める。高齢化も深刻だ(総務省統計局「平成21年全国消費実態調査」) (撮影/写真部・大野洋介、立体イラスト/kucci)

 非正規社員、失業、高齢化、病気――。いま、奨学金や住宅ローンなどの借金返済に困る人が増えている。明るい未来を担保にして借金が出来る時代は終わりつつあるのか。AERA 2017年4月3日号では「借金苦からの脱出」を大特集している。

 失業や離婚、病気などで住宅ローンの返済ができなくなるケースは多い。滞納を続ければ、あっという間に自宅は競売にかけられ強制執行されてしまう。どうすればいいのか。

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 会社員の男性(46)は、離婚して出て行った元妻と子どもに、毎月養育費を仕送りしている。その負担が苦しくなってきたところに、勤務先が定時退社を推奨するようになり、残業代頼みだった収入が激減してしまった。

「もう、住宅ローンを払い続けられない──」

 11年前に3800万円のローンを組んで手に入れたマイホーム。残債はまだ3千万円もあった。近くの不動産会社に自宅の査定をしてもらったところ、評価額は「2200万~2500万円程度」という回答に愕然とした。これではたとえ自宅を売却しても、ローンの完済は不可能だ。

 ローンは払えないが、家を売ろうにも売れない。こうしたケースで住宅ローンの延滞を続けていると最終的にどうなるのだろうか。住宅ローン・借金問題に詳しい弁護士の須山幸一郎氏は、こう話す。

「一般的にはローン債権を持つ金融機関に自宅を競売にかけられることになるでしょう。競売での落札額は時価の60~70%程度の低額になることがほとんど。残った債務の支払いが困難な場合は、裁判所に自己破産の申し立てをすることになります」

●競売が近所にバレて

 落札されれば自宅は買い受け人のものになり、明け渡さなければならない。たとえ行き場がなくても、居座ればいずれ強制執行で追い出されることになる。競売で落札するのは転売目的の不動産業者が多く、近所に売り出しの広告をバラまいて、競売にかけられたことが知られてしまうケースもある。

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