●返済が月5千円に

 例えば、任意売却後に残ったローンの額が600万円程度の場合でも、話し合いによっては100万円程度まで減額してもらえたり、月5千円から1万円程度といった少額での分割弁済が認められる例はよくあるという。

「債権譲渡というと、怖い取り立てが来るのでは?と心配する人もいますが、悪質な取り立ては法で禁じられています。サービサー自体も金融機関の子会社が多いので心配ありません」

 任意売却の手続きは複雑なため、通常は「任意売却119番」のような専門の会社に依頼することになる。

 同社の場合、売却が成立した際に、金融機関側から成功報酬の配分を受ける仕組みで、相談者が直接手数料を支払う必要はないという。

 ただし、任意売却にも当然ながらデメリットはある。原則的にローン契約があるうちは対象物件の売却はできないので、その契約を無効にするため3カ月程度ローンを延滞する必要があるという。その場合、いわゆる「信用情報」に傷がついて、ブラックリストから消えるとされる5~6年程度は新たなローンは組めなくなる。

「任意売却を検討した時点ですでに延滞している場合は、なるべく急ぐ必要があります。通常、滞納が始まってから半年から1年で競売にかけられてしまうので、それまでに任意売却を成立させる必要があるのですが、買い手が見つかるまでに時間がかかると間に合わないケースがあります」

●5%が不良債権

 富永氏によると、住宅ローンの返済が苦しいと相談に訪れる人の中で、その原因として最も多いのが「収入減」で、3割近くを占める。勤務先の経営不振で賃金を大幅カットされたり、早期退職を余儀なくされて相談に来る人は増加傾向にあるという。

 長期固定金利で人気の住宅ローン「フラット35」を提供する住宅金融支援機構のデータによると、同機構が持つ債権のうち不良債権にあたる「リスク管理債権」の比率は5・12%(2015年度)。すでに返済不能、あるいは困難になっているローンは少なからずあることがわかる。

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