「完全なでっち上げです。住居費、生活費もほぼ私の負担で経済的DVもありえません」

 意に反して離婚調停が進むなか、シンジさんは面会交流を申し立てていたが、面会できたのは2年間で2回だけ。それも妻の地元で第三者機関の担当者を交えて60分だけという条件だった。最初は娘が1歳半のとき。殺風景な広い部屋でおもちゃで遊ぶ娘を遠くから見守るだけ。その「非日常」の雰囲気に娘は泣きだしてしまい、結局、30分で切り上げられた。9カ月後の面会も同様に泣いてしまい、30分で終了。父親だとわかってもらうこともできなかった。

「もしかしたら、妻は私が親のように諭すのが気に入らなかったのかもしれない。でも、それだけで7カ月の娘と引き離されて、2年間で会えたのはたった1時間というのはひどい」

●面会交流申請が急増

 厚生労働省の「全国母子世帯等調査」(11年度)によると、別居親と子どもの面会割合は母子世帯で27.7%、父子世帯で37.4%。別居親の6~7割は子どもと会えていない。一方で、面会交流調停への申請数は増え続けており、15年は1万2264件(司法統計)。00年と比べて5倍以上にもなっている。

 民法には面会交流の明確な規定はなかったが、12年施行の改正法で「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記された。こうした流れを受け、16年末、超党派の国会議員が所属する「親子断絶防止議員連盟」は、別居親との面会を促す法案をまとめた。

 ノンフィクション作家の西牟田靖さんは、今年1月、離婚前後に子どもと引き離された父親の葛藤をつづった『わが子に会えない』を出版した。

「子どもに会えない父親=妻や子に暴力を振るう男性というレッテルを貼られがちです。しかし、私が話を聞いた父親たちは、子ども思いで暴力を振るうようにも見えず、経済的に安定している方が大半でした。離婚事由として、妻から身に覚えのないDVを訴えられるケースが多く、いきなり子どもと断絶させられたうえに、どうやって“無実”を証明すればいいかもわからない。混乱の中で司法の判断だけが進み、面会交流も認められにくくなる。そうなれば円満解決はもはや困難です」

 ナオトさん(37)は、1年半前に妻に子を連れて出ていかれた。当時、長男が2歳、長女は3カ月だった。子育ては自分でやりたいという妻の意思を尊重し、代わりに掃除、洗濯、皿洗い、ごみ捨てなど家事全般を請け負う、協力し合う夫婦だった。それなのに、手紙一枚を残し、妻と子どもは突然姿を消した。

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