Dさん:内容や番組によって異なりますが、民放なら15分で100万~150万円、30分で400万円、60分で800万円、120分で900万~1200万円といったところが相場だと思いますが、それがNHKなら1.5倍近い。国際紛争などの硬派なネタも通る。

●あまりに過剰な広告主への配慮

Eさん:制作費の問題って、別な問題も生んでいるように思う。テレビの影響力がどんどん小さくなって、CMが売れなくなった結果、起こったのはクライアントへの過剰な気遣い。訴訟リスクがあるものも敬遠される。

Aさん:BPO(放送倫理・番組向上機構)も厳しくなって、この10年で好きなことをできなくなった。よく、芸人の方からは「もっと思い切ったことできないの?」と、愚痴をこぼされます。昔は象を借りてきて、テレビ局の周りをレースさせるなんて企画もあった。僕ら世代がテレビにかじりついて見た「ダウンタウンのごっつええ感じ」なんて、いまではほとんど放送できないでしょう。その点、いまの芸人さんはかわいそうですね。

Cさん:コンプライアンスも年々厳しくなるばかり。「一般の人には全てモザイクをかけろ」と言われ、それで渋谷のスクランブル交差点なんて映したら、ほぼモザイクですよ(笑)。スポンサーチェックも厳しくなるばかりで、ある会社のドキュメンタリーの食番組を制作していたときは、他社商品が映るのはもちろんNGで、食事のマナーが悪いカットもほぼNG。もはやドキュメンタリーじゃない。

Aさん:すべてが悪循環ですね。若者のテレビ離れから、現場を支える意欲ある若手テレビマンがいなくなり、CMが売れなくなった結果、低予算と過剰な規制のなかで番組を作らないといけない。これではテレビが面白くなるはずがない。

Cさん:SNSも一役買っていますね。客席観覧スタイルの過去のバラエティー番組の映像を使いたかったのですが、「観覧の人すべてに承諾をとってください」と言われ、諦めました。スクリーンショットにとられ、拡散されるのが怖いようです。肖像権やプライバシーが大事なのはわかるのですが、行き過ぎると何もできなくなります。

Bさん:テレビ好きにとっては、生きづらい時代になるばかりですね。

(構成/編集部・澤田晃宏、竹下郁子)

AERA 2016年11月28日号