Dさん:制作費削減の影響でディレクターの仕事も増えました。理由は二つです。

 一つ目はカメラの小型化。昔は1台1千万円以上もしたけど、いまメインで使っているのは100万円以内で買えるティッシュ箱くらいの大きさのもの。スマートフォンでも放送に堪えうるレベルの動画を撮れるようになってしまった。結果、昔は技術プロダクションに委託するのが当たり前でしたが、経費削減のために本当に技術が必要な大自然モノやスポーツなどを除き、ディレクターが撮っている。

 二つ目は「ファイナルカット」などの優れた編集ソフトが出てきたこと。経費削減のために外注せず、自分でやれることは自分でするという方針のもと、仕事は増えていくばかりですね。

●フリーのほうが収入よくなる

Eさん:経費削減は、テレビ局も同じ。私の体感でいえば10年くらい前は8割くらいが正社員だったけど、いまは4割くらい。大半が有期雇用の契約社員か、制作会社からの出向組。そんな調整弁のように社員を使っていたら、経験も蓄積されず、会社への愛も薄れ、面白い番組も生まれてこない。テレビ局社員の高額給与を維持するには、仕方がないのかもしれませんが。

Aさん:一方の下請け制作会社の給料は、彼らの半分程度。30代で年収450万円、40代で550万円といったところでしょうか。うちは残業代が出ません。

Bさん:だから30代でフリーになる人も多いですね。フリーで生きていくには、企画力や仕事のスキルもあるけど、何より人脈。なかでも力のある局の社員。何本かレギュラーで入る見込みが出てくれば、フリーになったほうが収入だけならいい。

Dさん:フリーなら15分の特集1本作って40万円くらいがギャラの相場かな。まれではあるけど、テレビ局に出向して、そこで見初められ、中途入社でテレビ局の正社員になるケースもあるね。だけど報道関係は真面目な人が多いから、給料より自分のやりたいことをできる場所を求める人が多い。

Eさん:制作費が下がって、いまでは海外の秘境のドキュメンタリー番組などはまず企画が通らない。テレビを見るのは高齢者が中心だから、どうしてもグルメや旅番組、病気や健康などの情報番組が中心になってしまう。報道やドキュメンタリーの分野で優秀な人はNHKを目指しますね。いまでも予算は潤沢に出ますから。

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