「予選の走りは自信になった。もっとやれる。4年後は9秒台を出した状態で、もっと自信を持ってオリンピックに出る。そしてファイナルに残りたい」

 自己ベストで2人を上回る桐生は、スタートの爆発力と脚の回転の速さが生み出す加速が持ち味。初出場のリオ五輪ではスタートダッシュが決まらず10秒23で予選落ちしたが、

「4年前はオリンピックなんて想像もしていなかった。4年間で人は、どれだけでも変われる。もっと変わっていきたい」

 東京五輪にはさらに、昨年の世界ユースで100メートル、200メートルの2冠に輝き、北京世界陸上の200メートルで準決勝進出を果たした17歳のサニブラウン・アブデルハキームも控えている。4年前に桐生やケンブリッジが無名だったように、新たなヒーローが現れるかもしれない。

 東京五輪での日本人初の9秒台、88年ぶりの決勝進出が見えてきた。

■リオ五輪の男子100メートル決勝タイム

1.ウサイン・ボルト(ジャマイカ)/9秒81
2.ジャスティン・ガトリン(アメリカ)/9秒89
3.アンドレ・デグラッセ(カナダ)/9秒91
4.ヨハン・ブレーク(ジャマイカ)/9秒93
5.アカニ・シンビネ(南アフリカ)/9秒94
6.ベン=ユセフ・メイテ(コートジボワール)/9秒96
7.ジミー・ヴィコ(フランス)/10秒04
8.トレイボン・ブロメル(アメリカ)/10秒06

※世界記録は……ウサイン・ボルト9秒58
※リオ五輪の日本勢は……山縣亮太10秒05(準決勝)、ケンブリッジ飛鳥10秒17(準決勝)、桐生祥秀10秒23(予選)

(編集部・深澤友紀=リオデジャネイロ)

AERA 2016年8月29日号