先生が多忙なのは事実だが、より大きな問題は「多忙感」にある──。そこに着目して改革を進める学校が横浜市南区にある。高台の住宅街にある市立永田台小学校だ。住田昌治校長(58)は、持続可能な開発のための教育「ESD」に10年にわたって取り組んできた。

「問題は、長時間働いても自己肯定感や充実感がないことです。子どもは大人の姿を見て育つ。職員室のあり方はそのまま教室の姿につながります」

 住田校長は、ボトムアップの学校運営を心がけている。15年度には「先生元気化プロジェクト」を実施。教師自身が日ごろ感じている課題を洗い出し、定時退庁日の設定、学年便りと学校便りの統合など、12の課題に取り組み、解決した。

 今年4月には教師からの提案を受け、職員室の一角にカフェコーナーも設置。教師同士の日常的な対話が増えたことで、会議の数も減らせた。

「なによりの成果は、先生たちが明るくなったこと。現場にどれだけ任せ、見守れるか。そこに校長の力量が問われます」

 住田校長は力をこめて語った。

●選択と集中で遠足中止

 ビジネスの視点から、教師の激務軽減に取り組む校長もいる。

「大事なのはスクラップ・アンド・ビルド。そうしないと業務は膨らむばかりで、現場はパンクする」

 と語る、横浜市立中川西中学校(都筑区)の平川理恵校長(48)だ。リクルートのトップ営業、留学支援会社のマネジメントを経て、公立中学校では民間出身者初の女性校長となった。生徒数約千人、教職員約70人を擁するマンモス校。「教育理念の共有」とともに大事にしているのが「選択と集中」だ。

「例えば学校行事について『毎年やっているから』という理由で行うのはやめましょう、と言っています」

 実際、キャリア教育を充実させるため、2年生の遠足をやめる決断をした。日ごろからホームページや茶話会などを通じて、保護者とのコミュニケーションを大事にしているが、こういうときこそ情報をいち早く伝えることが大事だという。

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