●体操黄金期の幕開け

 中学3年生のときに全日本種目別選手権のゆかで内村に次ぐ2位になると、高校2年生で初出場した13年の世界選手権のゆかで金。弱冠19歳にして世界選手権に3度出場し、金三つ、銀二つのメダルを獲得している。国際大会の経験は豊富だ。

 今回は団体メンバー5人の中で唯一の五輪初出場だったが、

「自信があったので(地元ブラジルへの)歓声も気にならなかった。いつも通りでいいやと、いい意味で適当にやりました」

 自身の名前が付く技をゆかと跳馬で計四つも持つ白井は、ひねりを極め、ゆかと跳馬のスペシャリストだが、4月に行われたリオ五輪選考会を兼ねた全日本個人総合選手権では内村に次ぐ2位と、オールラウンダーとしても結果を残しはじめている。白井は言う。

「東京オリンピックでは、航平さんのようなオールラウンダーとして出場したい」

 勝因は白井だけではない。つり輪以外の5種目に出場しミスのない安定した演技でチームを支えたのが加藤凌平(22)だ。田中佑典(26)は、内村が「代表の中で一番美しい演技と正確な技さばき」と評す演技で、予選でミスをした平行棒で高得点。山室は、ムードメーカーとして「心の支え」(内村)だった。チームでつかんだ金メダルだった。

 客席の一角には、おそろいのユニホームを着た選手の家族たちの姿があった。家族たちは、競技開始30分前にみんなで円陣を組んだ。応援も「せーの」の掛け声で合わせる。

「親たちのチームワークがいい年は選手の成績もいいんですよ」と勝晃さん。日本の体操界は黄金期の幕開けを迎えようとしている。(文中一部敬称略)

(編集部・深澤友紀=リオデジャネイロ)

AERA 2016年8月22日号