この治療を導入している国立国際医療研究センター病院・呼吸器内科診療科長の杉山温人医師は、そう説明する。

 静脈麻酔と局所麻酔をし、気管支鏡をのどや鼻から肺の気管支内に入れ、先端につけた電極から高周波電流を10秒間流して65度に温める。

「気道にダメージを与えることなく、筋肉を最も効率的に減少させることのできる温度と時間です」(杉山医師)

 1カ所温め終えたら少し電極をずらし、温める範囲を広げていく。

 右肺の下、左肺の下、両肺の上と3回に分け、3週間以上の間隔をおいて行う。1回につき40~70カ所を温めるため、治療には約1時間かかる。治療後の痛みなどはほとんどないが、一時的に発作が誘発される可能性もあるので、1週間程度の入院が必要だ。

 2015年4月に健康保険が適用になったが、治療の対象は18歳以上で、薬を使用しても効果が不十分な重症の患者に限られる。費用は高額療養費制度を申請すれば、所得などにもよるが、通常は入院費を含め20万円ほどで済む。

 浅川さんは昨年4月から国際医療研究センター病院で治療を受けた。初回治療の3週間後から朝のせきがほぼなくなり、3回目を終える頃には喘鳴もなくなった。

「夜、自分のせきや喘鳴で目覚めることなくぐっすり眠れるし、発作が怖くて控えていた友だちとの外出も気軽にできるようになったそうです。『普通の健康な人のように感じます』という言葉が印象的でした」(同)

 国際医療研究センター病院では、現在までに浅川さんを含め12人の患者がこの治療を受け、ほとんどの人に呼吸機能や症状の改善が見られた。

 米国や英国、カナダなどのチームが、治療を受けた患者162人を5年間追跡し、発作の発生頻度を調べたところ、治療前に比べ半減した。救急外来を受診する割合も治療前より8割近く減った。根治はできなくても、効果は少なくとも5年続くとされ、減薬できる可能性も高い。(ライター・谷わこ)

AERA  2016年3月7日号より抜粋