「遠くから来ている他の選手と会うのが楽しみだった。小学生のころは、勝てるから楽しいとかじゃなかった。うまく当たって飛んだらすごく気持ち良かったけど、一番は友達かな。違う学校の子と知り合うとか、普通ないでしょ? それが沖縄とか北海道に住んでいる子と仲良くなれるんだから」

 試合で友達に会いたい一心でゴルフに熱中していたら、4年生で初めて父に勝てた。勝つ喜びを知った瞬間だった。

「うわ、お父さんに勝った!って、嬉しくなっちゃって。もっと頑張るぞって気になったかも」

「ほぼビリ娘」に負けた父はさらに面白くなってきたなと思ったが、過剰に干渉しないよう気をつけた。なぜなら、親に叱られたくない一心でスコアを過少申告する子どもが少なくないと感じていたからだ。スコアを自己申告するゴルフは、本来なら公正性やフェアプレーの精神を学ぶスポーツのはずだ。

「伸び伸び楽しくやってくれればいいと思っていた」(裕之さん)

 そこからめきめきと腕を上げた。中学生になったら160センチ、50キロと体も大きくなった。マッチ棒を卒業したら、ドライバーも飛ばせるようになった。

AERA  2015年12月14日号より抜粋