「69億円が1千億円超となり、今度は491億円。民間企業ならこんなことをしていては全員クビ。開催決定前に詳しい調査が難しいのは分かるが、いくらなんでも10倍超はないでしょう。見直し後も本来の69億円がベースになっているのか」

 実は建設工事では、設計会社の取り分はプロジェクト請負金額の3~5パーセントが目安。総額が減れば設計会社の実入りも減るため、減額とはなりにくいのだ。

「設計会社は造り方は知らないから金額もいい加減。新国立で分かるでしょ」(業界関係者)

 海の森には、ボート関係者からも疑問の声が上がっている。バルセロナとアトランタの五輪ボート競技日本代表で、現在は社会人チーム監督の岩畔道徳(いわぐろ みちのり)さんは言う。

「コースサイドに風力発電の風車がある。あり得ない。風が強い場所だと証明しているようなもの。ボートなどの水上競技には静かな水面が絶対条件です」

 構造にも大きな問題があるという。岸辺はコンクリート堤防で切り立った構造。水面付近の風を防ぐ効果はあるが、これでは動力船やボートが起こす波が反射しあう。しっかりした消波と強風対策が必要だが、それだけコストがかさむことになる。

AERA  2015年8月24日号より抜粋