6年間で家が1軒建つといわれるほど高い私立大医学部の学費。安さなら国公立だが、特待生や奨学金の拡充などで選択肢は増えつつある。

 一般に、私立大学医学部の学費は偏差値と反比例する傾向にある。首都圏の難易度の高い大学ほど学費が安い。「最安値」の順天堂大学の学費は2080万円。偏差値は慶應大、東京慈恵会医科大学に次ぐトップクラスだ。逆に偏差値からは最も入りやすそうな川崎医科大学は、学費が4550万円と最も高い。

 国公立大学医学部を狙う受験生が通う駿台予備学校医歯薬専門校舎の校舎長、宮辺正大さんはこう説明する。

「一般のご家庭ならば国公立を目指します。私立大は併願」

 併願先は、学力と経済力の兼ね合いで決めるのが現実だ。

 進路選択の参考にしたいのが、特待生や奨学金の制度だ。私立大学も優秀な学生を確保するため、手厚くしている。日本医科大学では2月の入学試験から特待生制度の枠を前年の30人から倍の60人に拡大する。昭和大学の特待生の枠は78人。

「国公立に受かるレベルの受験生なら対象になりうる。昭和大の場合、300万円が免除されれば6年間で2千万円を切るので、併願の候補になる」(宮辺さん)

 2010年から、地方の医師不足解消を目的に設けられている「地域枠」という制度も、受験生の選択肢を広げている。地域医療に従事することを条件に、国が医学部の増員を認め、医師を確保したい都道府県が学生に奨学金を貸与。卒業後、貸与年数の1.5倍(9年間)、僻地や離島などの公立病院に勤務すれば、返還が免除される。奨学金を貸与する自治体の出身者でなくても応募できる枠も多数ある。地域枠の制度は、19年度までは継続することが決まっている。

AERA 2015年1月26日号より抜粋