JMC3Dデータ加工音楽大学出身 高澤幸乃さん(左)医療機関からCTデータを受け取り、すぐに3次元データに加工する。加工ソフトの使い方は、入社後に学んだ代表取締役CEO渡邊大知さん(左から2番目)頭蓋骨の再建にも美しさが求められるように。手元の頭蓋骨模型は、社長本人のものオペレーター金融専攻出身 大門英明さん(左から3番目)高澤さんが作成した3次元データを、3Dプリンターで加工する。加工時間は、約5~6時間焼き加工スポーツ科学専攻出身 南部圭吾さん(右)完成したての造形物はまだ柔らかいため、焼き加工で強度を上げる。すべて手作業。2時間程度で完成する(撮影/慎芝賢)
JMC
3Dデータ加工
音楽大学出身 高澤幸乃さん
(左)
医療機関からCTデータを受け取り、すぐに3次元データに加工する。加工ソフトの使い方は、入社後に学んだ
代表取締役CEO
渡邊大知さん
(左から2番目)
頭蓋骨の再建にも美しさが求められるように。手元の頭蓋骨模型は、社長本人のもの
オペレーター
金融専攻出身 大門英明さん
(左から3番目)
高澤さんが作成した3次元データを、3Dプリンターで加工する。加工時間は、約5~6時間
焼き加工
スポーツ科学専攻出身 南部圭吾さん
(右)
完成したての造形物はまだ柔らかいため、焼き加工で強度を上げる。すべて手作業。2時間程度で完成する(撮影/慎芝賢)
この記事の写真をすべて見る
Web制作会社政治経済学部出身 平田元吉さん商社で学んだファッション知識と専門大学院で学んだITスキルを生かす。祖父が繊維問屋を経営。就職した商社では、フランスやNYのインポート商品を担当した。プログラミングは独学で学んだが、体系化するために専門大学院へ。企業との共同研究にも取り組む(写真:本人提供)
Web制作会社
政治経済学部出身 平田元吉さん

商社で学んだファッション知識と専門大学院で学んだITスキルを生かす。祖父が繊維問屋を経営。就職した商社では、フランスやNYのインポート商品を担当した。プログラミングは独学で学んだが、体系化するために専門大学院へ。企業との共同研究にも取り組む(写真:本人提供)
初代iPadを発表するスティーブ・ジョブズ。2010年1月27日、サンフランシスコにて(写真:gettyimages)
初代iPadを発表するスティーブ・ジョブズ。2010年1月27日、サンフランシスコにて(写真:gettyimages)

65%の小学生が「今はない仕事」に就く時代。
ロボット、3Dプリンティング、ゲノム、先端素材、再生可能エネルギー……。
10年後に伸びる分野を支えるのは、テクノロジー+αだ。
(編集部・齋藤麻紀子)

 ミドリムシを使って食糧問題や環境問題の解決をしようと研究する、バイオベンチャー「ユーグレナ」の出雲充社長は、もともとは東京大学文IIIに入学した文系男子だ。

「バイオの仕事をするために、バイオの勉強から入るのはナンセンス」

 と言い切る。2005年には世界で初めて、ミドリムシの大量培養に成功した。当時、専門家は口を揃えて言った。

「ミドリムシは食物連鎖の最下層の生物。すぐに食べられちゃうから、大量培養はできないよ」

 専門家なら常識的に言えば無理と考えるが、「食糧不足の問題を解決したい」という熱意で突破した。発酵技術を参考にするため、北海道のチーズ生産者や、京都の漬物屋さんなど全国各地を、現在の取締役、鈴木健吾さんと訪ね歩き、培養法を見つけた。今のところ、ほかに大量培養を成功させた者はいない。

●全く新しい概念を生む

 出雲社長は「食糧問題解決」という目的を見つけ、その方法としてミドリムシが役立つと知り、東大で3年生への進学時に農学部に転部した。

「ミドリムシの研究からスタートしたら、大量培養できないという常識にぶつかっていた。『何に役立てたいか』という出口を意識したことで、イノベーションが生まれた」

 どの業界においても、技術革新はすでに飽和状態にある。素早く汚れが落ちる洗濯機に、燃費がいい自動車など、商品をさらにバージョンアップさせる競争が続いている。だが、10年後に必要になるのは、いままでにはない全く新しい概念の商品やサービスを生み出す「発想力」だ。

 昨年、研究機関のマッキンゼー・グローバル・インスティテュートは、2025年の経済に影響を及ぼす12の技術を発表した。あらゆるモノをインターネットにつなげる技術「IoT(Internet of Things)」、グーグルが買収を急ぐロボット分野、日本でも1兆円市場ともてはやされる3Dプリンティング、遺伝子研究を医療に応用するゲノム分野……。

 これらの分野に直結する学部は、ロボット工学や人間工学、情報通信、遺伝子工学やバイオサイエンスなどだ。それらの専門性のニーズは今後さらに高まるだろうが、必要なのは専門知識だけではない。

 3Dプリンティング事業を行うJMCは、社長が文系出身で、社員の半分も文系出身者。だれもこの技術に注目していなかった15年前から、事業を始めた。

 取材に訪れた日も、人間科学部、法学部、音大出身など、「文系脳」の社員たちが活躍していた。相手にするのは医療機関。JMCには、毎月20~25件ほど「頭蓋骨」の注文が入る。

次のページ