もちろん室内がキレイに越したことはないが、トイレに求めるものはそれだけではない。

 前述のアンケートでは、自宅以外のトイレでお尻洗浄機能を使うかを聞いてみた。なんと、「できるだけ使わないようにしている」「絶対に使わない」が約49%。さらに、その使用法も聞いたところ、「用を足し終わったら洗浄機能を使う」が約6割。紙で拭いてから洗浄機能を使う人を圧倒的に上回った。一方で、「洗浄機能を使いながら用を足す」人もわずかながらいた。自宅以外のトイレを使えない人が怯えるのは、こうしたイレギュラーとも言える使い方をする人を想像するからだ。

43度という黄金角

 ここでポイントとなるのが、冒頭で触れた「43度」だ。TOTO広報部の山下名利子さんは、こう説明する。

「当時の社員200人以上の協力のもと、便座から肛門の位置を測ってその距離の平均値を算出。ノズルの位置が決まるとともに、お尻に当たった洗浄水の跳ね返りがノズルに当たることなく真下に落ちる角度が『43度』だったのです」

 80年の発売以降、この「43度」は、一度も変わっていない。黄金比ならぬ黄金角。通常の使用法であれば、衛生的にも計算し尽くされている。にもかかわらず、「外で使わない」という人がこれほどいる。

 43度に限らず、日本人はトイレの快適さを追求し続けてきた。ウォシュレットだけではない。TOTOの擬音装置「音姫」や壁を厚くすることでの静音、消臭効果、さらには荷物台の設置など、トイレをより居心地のよい空間にする傾向が強まった。トイレ内で食事を取る若者らの「便所飯」が話題になったことも記憶に新しい。時代とともにトイレは「究極の個室」へと変化したのだ。

 精神科医で『なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか』の著者である和田秀樹さんは、こう分析する。

「海外では、トイレの下側をすっぽり開けた扉が多い。これは防犯上、そうせざるを得ないのですが、言い換えれば、音や臭いといった、“人がいる”という存在感が付近の人に伝わることに抵抗が少ない。でも、日本ではプライベート意識が高まる仕組みが強まるばかり。生まれた時からトイレが完全個室化していた若い世代は、今後、出先のトイレが難しくなる人が増えても不思議ではありません」

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500人調査! 人には聞けない「トイレの使い方」