6カ月先まで予約が埋まっているという人気心理カウンセラーの中島輝さん。自身が35歳まで約10年間の引きこもり状態を経験し、回復したのち、日本メンタルヘルス協会で心理学を学び、自らの体験に立脚したオリジナルセラピーを数多く開発しています。


 現在は、カウンセラーの研修・講演・育成にも尽力する傍ら、昨年11月には『負の感情を捨てる方法 「最悪」は0.1秒で最高に変わる』(朝日新聞出版刊)も出版するなど、書き手としても活躍しています。


 今回は、そんな中島さんにお話を伺いました。


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――アドラー心理学や、サイコセラピー、コーチング、さまざまな心理学を修得された中島さんですが、心理カウンセラーを目指したきっかけは?


私自身、もとは"カウンセリングを受ける立場"でした。小学校4年生のときから分裂症・躁鬱症・パニック障害・統合失調症・強迫性障害・不安神経症などの精神疾患や、認知症・過呼吸・胃潰瘍・大腸炎・円形脱毛症・斜視などの症状に苦しみました。


精神状態も悪化して、外に出られなくなり、25歳から35歳まで約10年間引きこもり状態。その間、自殺未遂を何度も繰り返し、いつ死んでもおかしくない状態だったのですが、それでもそんな私を励まし、支え続けてくれた人がいました。


その人のおかげで、死の淵まであと一歩、というところで、この世にとどまることができたんです。人間は、たったひとりでいい、寄り添ってくれる人の存在によって、命を救われることがあるんです。だから、自分も誰かにとって、そのたったひとりの存在になれたらと思ったのが、心理カウンセラーを目指したきっかけです。


――絶望の淵から回復した中島さんの半生に勇気づけられる方も多いでしょうね。中島さんのように自分の意思で変われる人もいる一方で、変わりたいと思ってもなかなか変われない人もいます。


私は、「全ての人間は変われる」と思っているんですよ。変われない人と、変われる人に差があるとすれば、自己認識と自己受容ができているかどうかの違いです。つまり、今の自分の状態を、きちんと受け止めて、そして受け入れることができた人は変われる。一方、変われない人というのは、いつも誰かのせいにしたり、受け身の姿勢だったり、自分を認識できずにいるんでしょうね。


――ただ精神的になんらかの疾患を抱えた方は、自分の状態を受け止められないケースも多いのでは?


そうですね。実は、私のところに来る方は、本人の意思でと言うよりは、家族からの依頼で来る方も多いんです。本人は、「こんなところ来たくもない」という場合も多々あるので。そこで、自分のカウンセリングの限界を感じたわけです。


――どのような限界ですか?


来ていただけたら、なにかお話ができるけど、来ていただけなければなにもできない、という意味です。そこで、本を書くことを考えた。本だったら手に取って読んで、何か感じてくれる場合もあるでしょう。1冊の本がきっかけで、心に火がつくこともありますしね。あとは、そもそも私のカウンセリングを受けたくても行けないという人もたくさんいるので、活字を通して、気持ちを届けたいという思いもあります。

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