――中島さんご自身、"1冊の本がきっかけで、心に火がつく"という経験をされたことはあるのでしょうか?


ありますよ。私自身、苦しんでいた時期には、藁にもすがる思いで、あらゆる心理学書や、哲学書を読み漁りました。自分の経験を振り返っても、活字には大きな力があると感じています。たとえば、母親から面と向かって、「あなた大丈夫?」って言われたら、カチンときて「何がわかるんだよ」と反発してしまうこともあるでしょう。身近な人に言われると、素直に気持ちを受け取ることができなくなってしまうんですね。


だけど、同じ言葉でも、自分が尊敬している人や、人生経験を積んだ年配の人から言われると、素直に耳を傾けられる、納得して受け止められる場合もある。それと同じように、活字は固定観念がないので、スッと入りやすく、受け入れることができる。そして気づくと、その本に心が揺さぶられる......私自身、そのような経験を何度もしています。


――本書ではSNSを使っているときに生じる「マイナスの感情」についても書かれています。


たとえば、FacebookやInstagramで、高級レストランで食事を楽しんだり、海外旅行に行ったりしているリア充な人の投稿を見て、「いいね!」を押しながらも、実は心がざわついて、嫉妬心や劣等感でイライラしてしまう、という経験は(SNSをやっている人であれば)誰しもあるでしょう。


そういう場合には、まず、怒り、悲しみ、妬みというマイナスの感情の存在を、頭から否定せずに、認めてほしいと思います。


羨ましいと感じる自分がいるなら、一体自分はどのようにすれば、そのような羨ましいと感じる自分でなくなるかを考える。すると自ずと、羨望や憧れの対象に近づく努力をすればいいことに気づくはずです。嫉妬だけでなく怒りや悲しみといったネガティブな感情は、自分の成長のステップの材料にできるはずなんです。半径数メートルの狭い世界で完結してしまうのではなく、自分自身の欲望を客観的に見て、感情をコントロールできるといいでしょう。


――負の感情にとらわれない、振り回されないで生きる、ということですね。


誰だって、周囲の影響を受けて、感情が大きく揺れ動くときがあると思うんです。でも、どんなときでも「人生の主人公は自分」だということを忘れないでいてほしいですね。そしてこの本を読んで、どんな感情も自分でコントロールできるんだよっていうのをわかっていただけたらなあと思います。そしてその人らしい人生を歩んでいただければ、著者としてこんなにうれしいことはありません。



<プロフィール>
中島輝(なかしま・てる)

心理カウンセラー、国際コミュニティセラピスト協会代表。5歳で里親の夜逃げという喪失体験をし、小学4年から分裂症・躁鬱病・パニック障害・統合失調症・強迫性障害・不安神経症・認知症・過呼吸・胃潰瘍・大腸炎・円形脱毛症・斜視に苦しむ。25歳から35歳までの10年間、実家に引きこもる。自殺未遂を繰り返す状態の中、独学で心理学やセラピーを学び、自ら実践し、回復。日本メンタルヘルス協会で心理学を学んだほか、100近くの心理学やセラピー、特にアドラー心理学、フランクル心理学、カラー心理学、NLP、コーチング、ヒーリング、ボディーワークを独学で修得し、数多くのオリジナルセラピーを開発。近著に『トラウマが99%消える本』(すばる舎刊)など。