福岡女子大の寮(大学提供)
福岡女子大の寮(大学提供)

■1年間は寮で留学生と生活

 それまで文学部と人間環境学部の2学部体制だったが、「グローバル化の潮流の中では社会の求める人材育成にやや適応しづらい」との判断のもと、11年に国際文理学部の1学部体制に再編した。学内に国際学友寮「なでしこ」をつくり、日本人学生3人と留学生1人が共同生活を行い、日常的に異文化交流ができる場を整えた。1年生全員に寮生活を体験させる。そうした取り組みが奏功し、県外出身者の割合は徐々に増え、21年は3割を超し、九州各県から学生が集まるようになった。

「(改革当時は)女子大の数が減り、存在意義が問われる状況で、独自性を発揮・展開することが求められていました。いまでは入学者の多くが志望理由に『国際感覚を身につけたい』と挙げています」(戦略企画センター担当者)

宮崎国際大学(大学提供)
宮崎国際大学(大学提供)

 1994年設立の宮崎国際大学(宮崎市)は、全国に先駆けて英語でリベラルアーツ(教養)教育を行ってきた。地域や国際社会に貢献する人材の育成を目的としてきたが、地方の新設私立大とあって、学生集めに苦労してきた。看板学部の国際教養学部(定員100人)の志願者は13年度に146人だったが、16年度には94人とついに定員割れとなった。

 状況を改善すべく、担当者が力を入れたのが高校への直接訪問だ。県内の高校には最低でも年6回、九州にある他県の高校は、最低3回訪問して大学を売り込んだ。入試広報部長の矢野健二氏は「1日500キロ近くを車で走り回ることもありました」と振り返る。

 なぜ、手間暇のかかる手段を選んだのか。

「当初は大都会に交通広告などを出していたようですが、それは違う。まずは足元の宮崎や近隣県から学生を集めない限り、定員充足は難しいだろうと思いました。いかんせん、規模の小さな大学です。進学雑誌への情報掲載、SNSなどの間接的な接触手段に頼っていたのでは、集まりません。時間はかかっても『足で稼ぐ』ことに勝る方法はないと考えたんです」

 地道な取り組みは徐々に実を結ぶ。国際教養学部の志願者は18年度に135人、20年度には244人と、「どん底」期の2倍以上になった。宮崎を除く九州各県からの入学者は13年度は5人だったのが、20年度には27人に増えた。22年4月の在籍者は569人。うち約77%が宮崎県出身者だが、鹿児島県が6%、本県が4%と、隣県からの入学者も目立ってきた。都心ではなく、あえて地方の大学で学ぶ利点とは何か。矢野氏は胸を張ってこう答える。

「田舎にあるうちの大学に県外から入ってくる子たちは、初めから大学の学問に意欲を持っていることが多く、入学後も頑張ります。『英語力を伸ばしたい』など、明確な目標があるならうってつけの環境だと思います」

(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2023年2月17日号