自衛隊の12式地対艦誘導弾の発射装置
自衛隊の12式地対艦誘導弾の発射装置

「外交による対話にはほとんど触れられず、防衛力強化一辺倒です。かくして軍拡競争はどんどん進む。海外メディアは、日本が戦後一貫して保持してきた平和主義を放棄したというふうに報道していますが、それでいいんですか」

 現代の日本を取り巻く喫緊の課題は、防衛問題に限らない。逢坂氏が挙げるのは、人口減少問題と教育問題だ。22年の出生数は1899年の統計開始以来、初めて80万人を割る見通し。また、世界で18~20年に発表された自然科学分野での上位論文数で、日本は12位。統計がある1981年以降、初めて10位以内から脱落した。逢坂氏がこう警告する。

「限られた予算をどう案分するのか。人口減少問題や教育問題を含めて財源の議論をしなければならないのに、防衛費だけ決めて後は知らないでは、日本は潰れます」

 今回の増税議論に対し、軍事評論家の前田哲男氏はこう指摘する。

「かつて、日中戦争以降に設けられた臨時軍事費特別会計を連想しました。軍事費捻出のため、いわば『つかみ金』でした。国会に上程はされるのですが、何に使われたのかは一切説明不要。この特別会計によって、軍事費はどんどん膨張していったのです」

 政府は防衛費捻出のため他にも歳出改革、決算剰余金の利用、防衛力強化資金の創設を掲げているが、いずれも目算どおりにいくかは不透明だ。

「一番手っ取り早く、広く薄く徴収できるということで、結局、消費税が狙われることになるのではないか」(前田氏)

 敵基地攻撃能力は相手国が攻撃に「着手」した段階で行使できるのか。その判断基準を問われた岸田首相は「安全保障の機微に触れる」として回答を避けた。説明責任はすべて棚上げ状態だ。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2023年1月6-13日合併号