「正直申し上げて、あの吉永小百合さんから、大泉洋は生まれない。私もそう思います」

 大泉洋本人はそう語り、笑った。

 吉永小百合の出演最新映画が発表された。山田洋次監督がメガホンを取る「こんにちは、母さん」(来年9月1日公開予定)。吉永にとってこれは出演123作目にあたり、山田監督にとっては90本目。日本映画界の超重鎮がタッグを組む作品で、吉永演じる「母さん」の息子を大泉がやるのだ。テンションが高くなるのも無理はない。

 原作は日本を代表する劇作家・永井愛氏の同名戯曲で、2007年にはNHKドラマ化もされた人気作。今作では舞台は現代の下町に移されている。

 大泉演じる昭夫は、大会社の人事部長として日々神経をすり減らすうえ、妻との離婚問題や大学生の娘との関係に頭を悩ませる。そこで久しぶりに母親が暮らす東京下町の実家を訪ねると、いつも割烹着を着ていた母さんが、艶やかなファッションに身を包んでいる。どうやら恋愛をしているようで…。

 山田監督は、2001年に新国立劇場で観劇して大変気に入り、映画化を検討。その際は実現しなかったが、昨年、吉永と会ったときこの原作を思い出し、現代に置き換えれば吉永を主演とした映画ができると思い、オファーをした。

 一方、大泉の起用については、以前、山田監督が脚本を担当したドラマ「あにいもうと」に大泉が出演したことが縁となった。同作での演技や、普段の活躍、チームナックスの舞台などを観て、これまで演じたことのないような下町の元気な女性に挑戦する吉永の息子役は、大泉しかいないと思ってオファーをしたという。

 山田監督は、

「隅田川沿いの下町、古びた家並みの向こうにスカイツリーが高々とそびえる向島にカメラを据えて、この江戸以来の古い町に暮らす人々やここを故郷として行き来する老若男女たちの人生を、生きる喜びや悲しみを、スクリーンにナイフで刻みつけるように克明に写し取り、描き出したい」

 と意気込みを語る。

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山田洋次監督・吉永小百合の撮影現場