※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)

 共働き夫婦が増え、祖父母世代が孫の育児に関わるケースが増える中で聞かれるのが、「良かれと思ってやったのに」「こんなはずじゃなかったのに」というホンネの声。家族間だからこそ言いづらく、モヤモヤが蓄積されがちだという。孫育ての陰に潜むホンネを追った。

【アンケート結果】祖父母に頼ること、祖父母が引き受けること、どう考えますか?

*  *  *

「孫は可愛いけど、これがいつまで続くのかと思うと……」

 夫と2人暮らしの田中茂子さん(仮名・67歳)は“孫育て”に追われる日々を送っている。昨年、近くに住む娘に2人目の男の子が生まれた。可愛い孫がまた一人増えた喜びといったらない。娘宅までは車で10分ほどと、いつでも会える距離。上の子は3歳で、まだ目が離せない年齢だ。娘夫婦を少しでも助けようと、「できることは何でもするからね」と孫育てにウェルカムな姿勢を貫いてきた。

 広告会社で会社員として働く娘は、出産から1年経った今年、仕事に復帰した。1歳の子どもは、上の子とは違う保育園に預けることになった。娘からはよく「今の仕事と子育ての両立ができるか心配」という話を聞いていたこともあり、それとなく「下の子を預けるのはもう少し先にして、子育てと両立しやすい仕事を探したら?」と促した。だが娘は「これから子育てにお金もかかるから」「共働きで子育てしている人はたくさんいるから」と復帰を決め、「お母さんも近くにいるから、大丈夫だと思う」と続けた。薄々わかってはいたことだが、完全に“当てにされている”と感じた瞬間だった。

 かくして、茂子さんの読みは的中。最初のころは週に1、2回だった「保育園にお迎えに行って」要請は、気づけば毎日のことに。仕事を終えた娘は、茂子さん宅に子どもを迎えに来るついでに夕食を食べて帰ることが増えていった。娘の夫も多忙な仕事で、帰宅は夜10時過ぎ。「帰宅して、食べるものが何もないとかわいそう」と、娘の夫用の夕食までタッパーに詰めてしまう自分がいる。夫からは「ちょっと手伝いすぎじゃないか」と言われることもあるが、「少しでも助けてやりたい」と思うのが親心というものだ。

著者プロフィールを見る
松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

松岡かすみの記事一覧はこちら
次のページ