■基本姿勢は一歩引いて見守る

 帰省で家族が集まった際、酒に酔った次男から娘に向け、こんな言葉が飛び出した。信子さん家族は、信子さん夫婦+子ども3人とその配偶者で作ったLINEグループで、しばしば連絡を取り合っている。ほとんどが孫の写真の送り合いだが、近くに住む娘は父母と一緒に出かけた写真を送ることも多かった。

 次男はそれを見て、「近くに住む娘のところばかりが良い思いをしている」と言ってきたのだ。ムッとした娘はすかさず反論。「お礼もろくに返さないようじゃ、もらう資格もないでしょ」という言葉がつい出たとき、その場にいた全員が「あっ」と思った。

 信子さんが娘に、次男の妻がろくにお礼の連絡をよこさないことをこぼしていたことが明らかになってしまったからだ。以来、次男や妻と接するときには、ピリッとした雰囲気が拭えないという。

「子ども世帯同士は、何かにつけて競い合ってしまいがち。その点でも、“どの孫も同じように可愛い”“扱いには差をつけない”と平等な姿勢を明確に打ち出すことは、祖父母として大切な心構えです」(おやのさん)

 互いに気持ちよく孫育てに関わるにはどんなことが必要なのだろうか。基本姿勢は、「一歩引いて見守ること」だ。

「育児の主役は、あくまでお父さんとお母さんで、祖父母はサポーター。手や口を出したくなる気持ちはわかりますが、祖父母は、おおらかに“見守る”姿勢を心がけて」(同)

 たとえ共働きの子育て世代に代わって、孫育ての大部分に関わりを持つケースであっても、子育ての主体は両親。子どもが慣れない子育てに右往左往していても、祖父母世代は少し距離を置いて見守るのが一番大切な役割だという。

「祖父母世代は、自分たちが子育てで感じた“もっとこうしたら良かったこと”を無意識のうちに子ども世帯に押し付けてしまうことがあるから注意。子育て観は、それぞれに夢があるからこそ、アドバイスや口出しはなるべく控えて」(同)

 もちろん、祖父母世代には子ども世代にはない経験や知識もある。世代が変わることで、また違うものを伝えられることも多い。基本的には「おおらかに見守る」姿勢を心がけ、負担になりすぎない範囲で関わると良い。前出の棒田さんは言う。

「祖父母世代は、言葉で言わず、孫との関わりの中で補うのも大事なこと。祖父母の良さを生かした孫育てに、ぜひ取り組んで」

(フリーランス記者・松岡かすみ)

週刊朝日  2022年9月2日号

著者プロフィールを見る
松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

松岡かすみの記事一覧はこちら