――ジーナ・ガメルさんとずっと二人で監督しているようですね。

「二人で構想した最初の作品はSFだったの。劇場映画だったらとんでもない費用がかかったはず。もちろん実現しなかたけれど(笑)。今回のような予算規模の小さい映画でさえ、資金調達が大変だったから。二人で映画作りを始めたのは22歳頃、人生を謳歌するのに精いっぱいで。長い間試行錯誤していた。これまで完成までたどり着かなかったから、この映画は私たちにとって1本目なの」

――本作は、俳優として出演したアンドレア・アーノルド監督の「アメリカン・ハニー」(2015年)の撮影現場で発案したそうですね。

「共演した俳優がサウスダコタの地元の人で、意気投合して大親友になった。そこに映画好き、音楽好きの友だちが加わり、輪が拡大していった。脚本には1年かかったかな」

――当時の「インディアン居留地」の青年が主人公で、現地キャストの起用にこだわったようですね。

映画「War Pony」(c)Felix Culpa
映画「War Pony」(c)Felix Culpa

「現地キャスト以外の起用は考えなかった。少年たちにとってパーソナルな映画だし、彼らと私たちの関係もパーソナルだし。彼らから湧いてくる言葉をひとこと、ひとこと脚本に書き下ろしていった。シーン一つ一つ、カメラの位置なども細かく決めていった。彼らにとってどんな意味があるのかを考え、彼が不自然だと感じる部分は脚本に手を入れた。最重要視したのは彼らの視点。アドリブに見えるシーンも全部が脚本に書かれている。7年という時間をかけ築いた友情の上にこの映画はできあがっている。責任を持ってコミュニティーとコラボレートする事が重要だった。簡単ではなかったけれど」

――今年のカンヌのコンペ部門に女性の監督が3人しか入っていないのは残念ですね。男女平等という点で映画界の状況についてどう思いますか?

「資金を確保して映画製作までこぎつけている女性監督がどれぐらいの数がいるかを思う。私も男性の監督に比べると資金確保は難しかった。私はプロダクションの経営もしているから、そのあたりをシビアに実感する。同じ新人監督でも男性のほうがずっと大きな予算を託されている。業界内に、女性のリーダーシップに対する明らかな懸念があると体感した。意図的でないにしても。その点で女性にもっと機会が与えられるべきだと感じている」

カンヌ映画祭のレッドカーペットをキャストとともに歩くライリー・キーオ(c) Anthonin Thuillier
カンヌ映画祭のレッドカーペットをキャストとともに歩くライリー・キーオ(c) Anthonin Thuillier

――有名な一家の出身のあなたでさえ予算確保は難しいということは、一般的な女性監督の状況は一層厳しいものだと想像できますね。

「まさにその通り。私が一緒に仕事をした『ゾラ』(21年)を作ったジャニクサ・ブラヴォーもそう。もっと大きな予算をもらうべきだと思う。経験も天才的なひらめきもある素晴らしい監督だ」

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「プレスリー一家」であることの恩恵と葛藤