――プレスリーという家系であるということが、キャリアの助けになったと実感しますか?プラス面マイナス面は?

「他の新人俳優と比べたら、資金面でも恵まれていたし、エージェントもついたし、いろんな面でプラスになったとは思う。でもオーディションでは、そこで実力を証明することがすべて。恵まれていたからこそ、期待されていることに緊張し、プレシャーも感じた」

――逆に自分の実力が正当に評価されていないと感じることは?

「祖父の本業は音楽だから、俳優としての自分を家族から独立させて考えるのはそれほど難しくない。母(リサ・マリー・プレスリー)の場合は大変だったと思うけれど、私は2世代離れていて祖父との距離感もあるし、自分なりの道を切り開いているという意識が強い。でも明らかに、家族からの恩恵を受けている点には感謝している」

ライリー・キーオ(c)Felix Culpa
ライリー・キーオ(c)Felix Culpa

――監督デビューの今年、映画「エルヴィス」も公開です。感想は?

「映画は母と祖母、妹、父と一緒に観たの。家族についての映画だったから強烈な体験だった。私が初めて映画館で観た映画が、本作のバズ・ラーマン監督の「ムーラン・ルージュ」で12歳の時だった。大ファンの監督に祖父の物語を映画化したいと言われ栄誉だと思った。でもバズがどんな映画を作るのか不安は強かった。家族の物語だから正直、過敏な気持ちになった。完成作を観て、バズとオースティンがいかに心を砕いて入魂し、細心の注意を払い作り上げてくれたとわかり、嬉しかった。最初の5分間で涙が込み上げてきて、ずっと止まらなかった」

――自分の家族についての映画を観るというのは、確かに不思議な体験でしょうね。

「家族の世代をこえて続くトラウマが、あの時代に発端があったと感じた。それを目撃するのは強烈な体験だった。祖父の本質に触れる映像を作り上げてくれたんだと感じた。オースティンの演技は美しい。まさかあそこまで彼の演技やバズの業績に圧倒されるとは予想していなかった」

――あなたは祖母のプリシラさんと容姿が似ていますね。出演を依頼されませんでしたか?

「依頼はなかった。それが良かったのだと思う。出演したくなかったし。その辺りに境界線を引き、私たちの尊厳を保ってくれていた事をうれしく思っているの」

――エルビスはあなたのアーティストとしての自己形成の基盤になっていると思いますか?

「どうかしら。はっきりは言えない。でも遺伝子のどこかにあるかもしれない。多分わたしの家族、その物語すべてが、私という人間、アーティストとしての大部分を占めているのかもしれない」

 ※映画「エルヴィス」TOHOシネマズ日比谷ほか全国で上映中