前出の森さんは、「運動以上に体によい習慣はない」と言う。

「適度な運動は、加齢とともに動きが悪くなる心臓の劣化を防ぐのをはじめ、高血圧や糖尿病、大腸がん、認知症など、多くの病気の予防に効果があります。1日にたった15分の運動をするだけで、運動量がゼロの人に比べて死亡リスクが14%も減ったというデータもあります。でも、効果は一朝一夕に表れるものではありません。早いうちから運動する習慣を身につけましょう」

 運動が嫌いな人もいるだろう。森さんは、取り組みやすいものとして、ウォーキングを勧める。

「歩数は1日8千歩が目安。米国の女性約1万5千人が対象の研究では、8千歩までは歩けば歩くほど寿命が延びたというデータがある。大変に感じる人もいるかもしれませんが、歩数にこだわりすぎなくていい。続けることが肝心です」

 コロナの感染拡大で、免疫力の重要性を改めて実感させられた。医療法人康梓会Y’sサイエンスクリニック広尾統括院長で、アンチエイジングドクター(日本抗加齢医学会専門医)の日比野佐和子さんは、「免疫力を高めるには『幹細胞』がカギを握っています」として、食べ物を含めた生活習慣をトータルで改善する必要性を説く。

日比野佐和子さん
日比野佐和子さん

「幹細胞は全身にあって、細胞や組織を再生・修復する役割があり、若さや寿命にも深くかかわっていると考えられています。幹細胞も加齢とともに老化するので、ダメージを抑え、活性化し続けることができれば、老化のスピードを抑え、健康で若々しくすごせる時間も長くなるでしょう」

 日比野さんは幹細胞の活性化に必要な生活習慣として、(1)7~8時間の睡眠(2)青魚(3)深呼吸や瞑想(4)寝る前のストレッチ(5)赤ワインやダークチョコレートの五つを挙げる。

「良質な睡眠は自律神経を整え、細胞の修復、再生を促します。米ワシントン大の調査では、よく眠れている人ほどアルツハイマー型認知症の発症原因とされている脳内のアミロイドβの蓄積が少なかったといいます。サバやサンマ、マグロなどの青魚には、体内の炎症を抑え、細胞の活性を促すオメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれる。この二つの栄養素が少ないと、脳梗塞や心筋梗塞といった動脈硬化が原因となる疾患リスクが高くなることがわかっています」

 医療に関する研究や技術の進歩に伴い、「医者いらず」のノウハウも進化している。食事や生活習慣を改めて見直してみよう。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2022年4月29日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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