大丸心斎橋店(大丸松坂屋百貨店提供)
大丸心斎橋店(大丸松坂屋百貨店提供)

 さまざまな商品を陳列、販売してきた百貨店。歳末ともなれば、家族で出かけて買い物しレストランで食事──。そんな光景は今や昔となりつつある。モノを売らないことが新たな潮流だという。何が起きているのか。

【写真】大丸松坂屋百貨店として初のショールームスペース「明日見世」

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 東京駅の八重洲側に隣接する大丸東京店。その4階に10月、大丸松坂屋百貨店として初のショールームスペース「明日見世(あすみせ)」がオープンした。

大丸東京店のショールーム「明日見世」(大丸松坂屋百貨店提供)
大丸東京店のショールーム「明日見世」(大丸松坂屋百貨店提供)

 明日見世では商品が陳列され、客は商品を見て体験もできるが、その場で販売はしない。インターネットで販売する会社に百貨店が場所を提供している。購入はネットでとなる。年配客の多かった百貨店が20、30代の若い世代にも来店してもらおうと、顧客層の拡大を狙う。

 明日見世に出品するブランドは3カ月ごとに変わる。スキンケア用品やマニキュア、石鹸・美容液、衣料品のほか、下着、タオル、フルーツビールなど、地球に優しい素材・材料を使用するブランドが多いのが特徴で、環境志向の若い世代を意識していることがうかがえる。

 早くから、モノを売らないと公表してきた百貨店が丸井。青野真博社長は2020年9月、将来の世代に向けた事業を展開し、24年3月期までにテナントの構成の60%まで「売らない店」にすると表明。小売店を通さず、商品をネットで直接販売するなど、新しい価値を提供するテナントになるという。

 百貨店がモノを売らなくなってきているのは、売れないからだ。人口減少で消費が低迷し、百貨店が消費者のニーズに合わなくなっているとも指摘されている。経済産業省は今年、百貨店研究会を立ち上げた。研究会によると、百貨店の売上高は1991年の9.7兆円をピークに、最近は6兆円程度で推移し、コロナ禍の20年は4.2兆円に落ち込んだ。売上高の4割を占める衣料品の減少が特に顕著という。

 老舗の三越や高島屋、松坂屋などは呉服商だった。その経緯からか、衣料品を中心に、日用品などにも手を広げ、さまざまな商品を陳列・販売するようになり、まさに「百貨店」となった。

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